メディア掲載  外交・安全保障  2020.01.15

新たなる「大国の興亡」は人口動態から展望できる ー 米国が中国を再逆転、ネクスト大国が台頭 ー

中央公論 2020年1月号(2019年12月10日)に掲載

人口動態予測と覇権国家のゆくえ


神保  30年後、50年後といった未来予測は、あまりに変数が多いため、ほとんど当たりません。唯一、人口動態だけは確度が高いと言われていますから、まずはそこから考えてみたいと思います。

 現在の世界人口は約77億人ですが、国連の推計によれば、2050年には97億人に急増します。それ以降は増加のカーブが緩やかになり、2100年には109億人と予測されています。また、人口が増加する地域の大半は、南アジアとアフリカのサハラ以南に偏在しています。逆に言えば、ほとんどの先進国では人口が増えず、高齢社会に突入していきます。

 こうした予測から、アフリカはラスト・フロンティアであるとか、労働生産人口が集まる特定の場所の成長をどのように活かしていくかが長期戦略になるとか言われています。その一方で、過剰人口によって貧困や環境負荷の増大、資源の枯渇、定住できない人たちが移民になる、などのリスクも指摘されています。

 ところが、2019年2月に出版された『Empty Planet(誰もいない地球)』(D・ブリッカー、J・イビットソン著、未邦訳)では、国連の推計より遥かに速いベースで世界人口は減少に転じる、しかもそれは不可逆的であると論じています。

 理由は2つあります。1つは、新しい産業は単純な労働集約産業ではないため、知識集約型の人材を育でなければなりません。そのためには、多くの子供を育てるよりも、1人か2人の子供に徹底的に教育投資するほうがいいというもの。

 もう1つは、女性の自立。例えばフィリピンでは、この10年で合計特殊出生率が3.4から2.6に下がりました。これは教育の浸透と大きな関係があるというのです。

 このような人口カーブを描いた場合には、成長の果実とその影が、これまでの予想より遥かに早く出てくると考えなければなりません。

宮家  世界の人口動態は重要ですが、大国の覇権争いや安全保障の観点から見ると、人口だけでなく、少なくとも「領土、人口、資源、軍事力」の4つがポイントになります。

 この観点からすると、現時点での世界のメジャーリーグは、アメリカと中国とロシア。マイナーリーグは、日本やヨーロッパとなります。

 国ごとに今後の展望を見ていきますと、まずアメリカの人口は減りませんし、世界中から野心のある優秀な人材が流入する。あれだけ資源の多い大陸に3億人しかいませんから、国家主権の時代が続く限り、その力が衰えるとは思えません。

 ロシアは人口が減り始めていますから、今後、転落するかもしれません。しかし、広大な領土、豊かな資源、強大な軍事力があるため、なかなか勝てなくなっているもののメジャーリーグに残っています。

 軍事力に関しては、軍の能力だけでなく、その国家が軍事的な意思を通す意図がどれだけあるかを見る必要があります。軍の能力は人口が増えれば大きくなりますが、AI化が進めば人口は必ずしも決定的な問題ではなくなるかもしれません。もちろん、1億人を失ってもまだ何億人もいる国とそうではない国とでは、最終的な能力の差は出てきますが。

 また、国家の軍事的意図は極めて重要で、ウクライナやアメリカの大統領選にも関与するロシアの動きを見ていると、中国よりも遥かに強いように思います。

 中国の人口は桁違いに多いのですが、これから減少していきます。領土は広大で経済力もありますが、資源が決定的に足りません。

 日本やヨーロッパは確実に人口が減り、資源もない。軍事力もたいしたことはありませんから、メジャーリーグには入れません。



アメリカが中国を再び抜き返す


神保  アメリカの国家安全保障戦略や国防権限法には、戦略的競争によって中国とロシアに勝ち抜かなければいけないと書かれています。前提にあるのは、経済力、技術力、軍事力などを含めたアメリカの優位性が、中国の台頭によって脅かされているという衰退への恐怖感です。

 アメリカは相対的に中国に追い上げられていて、2020年代後半くらいに名目GDPで追い抜かれるかもしれません。

宮家  中国はいまがピークではないでしょうか。あと10-15年は持つかもしれませんが、その後の人口の高齢化を見ると、アメリカのように伸びていく国ではない。

神保  私もアメリカに追いついた時期をピークに、中国は長い低成長期に入ると思います。生産年齢人口の減少とともに高齢化が急速に進み、医療と社会保障支出の増大による債務が膨らむからです。

 一方で、少子高齢化が進む先進国の人口動態の例外的存在がアメリカです。アメリカでも出生率低下の傾向は認められますが、移民を含めると人口は今後も増加します。日本経済研究センターのレポートでは、長期的にアメリカはGDPの面で追い抜かれた中国を再び抜き返すと予測されています。

 アメリカの軍事力は優位であり続けると思いますが、少なくとも中国の周縁や一定の領域においては、アメリカの軍事力を拒否したり、凌駕したりする能力を持つところまで至るかもしれません。  したがって、目下のアメリカの戦略的競争とは、2030年代半ば頃まで自由で聞かれたルールに基づいた世界の秩序を維持できるのか、と言い換えることもできます。

宮家  そうだと思います。アメリカの国力の低下が言われていますが、それは国力を有効に活用するべき政治家の能力の低下にすぎません。

 さて、ここで、いま私たちが「途上国」と呼んでいる国々がこれからどうなるかも見ていきましょう。

 人口も領土も資源もあるインドは要注意ですが、軍事力をどのような形で保持するのか。世界の覇権を取りにいこうとするかどうかは疑問です。ロシアも中国も権威主義的な国家で、国民への締め付けが厳しく、力で国家の意思を実現しようとする。しかし、13億の人口を持ち、数百の言語を持つインドは、なんとか民主主義を成り立たせ、亜大陸で1つの世界を作り上げています。

 そうした国が国家目的を強く持って覇権を取ろうとするかどうか。インドが強い自己主張を持って大国化していく姿は想像できません。

神保  そうですね。インドは非常に誇り高い国で、国際秩序に関しても独特な立場を取っていますNPT(核拡散防止条約)体制にも加わりません。セーシェル、モルジブ、スリランカ、マダガスカルといった地域には積極的に関与するし、インド洋の秩序の安定までは関わっても、太平洋や南シナ海の主要プレーヤーになることはないと思います。

宮家  ヒンドゥーの世界を全世界に広げようという発想はないでしょう。



自信を持ち始めたネクスト大国


神保  インド以外に、人口の伸びと経済成長のポテンシャルが20-30年間続いていくであろうネクスト大国は、インドネシア、ナイジェリアです。

 インドネシアは、1990年代のアジア通貨危機やその後の混乱の時期はガタガタで、ナショナルアイデンティティを固めることで精一杯でした。しかし、経済成長が続き、民主化の経験を経て、自らを大国化することへの自信が出てきています。ASEANのリーダーであるだけでなく、G20の一員として、インド洋の経済発展を主導して、責任を持たなければいけない。そのためには地域大国になるという独特の発想が出てきたことは間違いありません。

宮家  2億5000万人の人口と市場がうまく回り始めて、意識が変わってきましたね。

 ほかに若干気になるのはイランとトルコ。イランは人口8,000万人で、資源もないわけではない。イスラムの世界では圧倒的なパワーも持っています。トルコは往年のメジャーリーガーでした。

神保  日本は今後、こうしたネクスト大国をできるだけ自分の仲間にしていくことが重要です。さらに、その仲間を通じて地域の秩序を日本にとって望ましくなるようにする。ひいては、日本が大事だと思う価値のために一緒に戦ってくれるような関係に育てていくことが大切です。

宮家  その鍵は海洋です。これから日本のシーレーンは、アラビア海からペルシア湾まで広がっていくわけですが、そこに通じる国々は、インド以外はどこも似たような利益を得ています。なかでもインドネシアは海洋国であり、中長期的には日本と利益を共有できる国です。

神保  このあたりの国々を、自国の外交安全保障のポートフォリオに組み込める国家が、今後は優位になっていくはずです。

 その一方で、アメリカにいま以上にポピュリズムが台頭してくると、かつてのように世界の秩序やグローバルな公共財を提供するといったリーダーシップを期待するわけにはいきません。

 ロールモデルとしてのアメリカが世界から後退し、その分、同盟国に負担を負わせる方向に進む。日本もヨーロッパもどんどん元気がなくなっていくにもかかわらず、です。このミスマッチがアメリカと同盟国に危機をもたらすポイントになるのではないでしょうか。



人口減少時代の日米同盟


宮家  日米同盟に関しては、日本の人口減少もさることながら、日本の地理的な位置と日本が海運国であることに重要なポイントがあります。

 かつての日米同盟の目的は、朝鮮半島の安定と台湾を守ることが中心でした。しかし、現在では、中国の進出をインド洋、中東まで含めてグローバルに抑止することに重心を移しつつあります。アメリカが中国の海洋パワーに対抗するには、西太平洋に何らかのプレゼンスが不可欠です。第七艦隊の事実上のメンテナンスができ、補給ができ、場合によっては武器弾薬を含めて支援してくれる、本当の意味の同盟国です。それができるのは日本しかありません。

 そのための技術的なレベルを維持できれば、日本の人口が減ったとしても、日米同盟に直接的に関係するとは思いません。逆に言えば、技術レベルが下がったり、メンテナンスができなくなったりすれば、アメリカにとっての日本の価値はかなり変わってくると思います。

神保  自衛隊の維持と少子高齢化は深刻な問題として捉えざるをえません。自衛隊の定員は約25万人ですが、定員充足率は90%程度に過ぎません。特に陸上自衛隊のような労働集約的な軍種には深刻な状況です。ミッションだけはどんどん増えていますが、それをこなせるマルチプレーヤーのような人材を採用することも難しくなっています。

 これを解決するには、1つめは定年延長。2つめは自衛隊の統合化や陸海空の大胆な人員比率変更により、労働集約的な体制から技術集約的な組織へと変えること。マルチドメイン化を強化し、人員減を質で補う体制にしていく。3つめはロボットです。自動化する領域をできるだけ増やして、選択と集中によるイノベーティブな発想で人を機械に置き換えていく必要があると思います。

宮家  人口が減ると一人の兵士の価値が高くなります。一昔前に、中国は女性よりも男性が多いから戦争がしやすいという単純な議論がありましたが、その中国ですら一人っ子ばかりの中でどうやって戦争をするのか。陸軍で白兵戦をやれば大変な犠牲が出ますから、それはできません。

 そこで、世界中で軍隊の無人化とAI化が始まっているわけですが、日本ではAIの軍事利用なんてとんでもないという反応が多い。生産性の向上や人手不足への対応という発想はあっても、軍事的な抑止力を高めるといった論点からAIについての議論はしないし、無人化の話もまだまだです。しかし、30年後を見据えるのであれば、すぐにでも取り組まなければならない課題です。



世界通貨の可能性

―中国の力を評価するにあたり、ビッグデータを集めるには、アメリカよりも中国のような権威主義的な体制のほうが有利だという議論がありますが、いかがでしょうか。


宮家  私もビッグデータの収集には、中国のような中央集権的な体制の国家のほうが有利だと思っていました。しかし、最近、考えを変えつつあります。自由を制限し、情報の自由な流れをコントロールしようとした時点で、ビッグデータの形成の観点からするとマイナスになるかもしれないという意見を聞いたからです。

 中国政府がいかにAIの技術を導入しても、あくまで力で集めているデータにすぎません。それよりも、ユーザーが求める情報を提供できるプラットフォームを作り、ユーザーが自主的に提供するデータが集積されたほうが、ビッグデータとしては役に立つはずです。長期的に見ると、中国にとって圧倒的に有利な状況が続くとは思えません。

神保  2019年10月に、フェイスブックのザッカーバーグが、リブラ(仮想通貨)についてアメリカの議会で証言をしました。フェイスブックに対する風当たりが強まる中、ザッカーバーグは、「もしも私たちがサービスを始めなければ、中国がデジタル人民元を始めます」と言いました。

 リブラはブロックチェーンによる新しい交換価値の流通であり、銀行口座を持たない人でも交換価値として得ることができる決済インフラです。フェイスブックユーザーによるグローバルな通貨ですから、金融のマクロコントロールや為替の考え方を変革し、信用や保険などのシステムを大きく変える可能性があります。フェイスブックがこの競争から降りれば、中国が入ってくるのは間違いありません。金融の安定性やマネーロンダリングなどへの懸念も大事ですが、金融当局は少し頭が固すぎるのではないでしょうか。

宮家  私が古いと言われればそれまでですが、もしもリブラのような通貨ができたら、中央銀行も金融政策も意味がなくなります。現在の金融政策には限界もありますが、新しい経済現象をかろうじて制御しています。金融政策を放棄するようなやり方は、少なくとも主権国家が国際政治のプレーヤーである限りはありえないと思います。

 中国が世界の金融政策を支配しようとすれば、すべての国が拒否します。

神保  デジタル人民元はリブラとは異なり発行母体は中国人民銀行ですから、まずは中国圏内の銀行や決済企業への普及となります。その後、国際送金、金融投資、電子決済との連携などに拡大すると、世界的に利便性が拡大する可能性を秘めています。

 リブラは、結果的には、国家に対する挑戦状を突きつけた形になってしまいました。私自身はリブラの世界的普及を見てみたかったのですが、現時点では主権国家の壁は高いということですね。



成功した移民政策はない


宮家  世界の人口と経済発展の話に戻すと、イスラム圏の人口はこれからも増えます。ただし、人口が増えている地域が経済発展、近代化ができるかどうかは別問題。レバノンやエジプトの民主化は一時期より後退していますし、チュニジアも危うい。

 近代化ができないから人口が増えるのか、逆に人口が増えすぎて近代化ができないのかはわかりません。しかし、人口が増えているにもかかわらず市民社会が育たず、自己統治能力が不十分のままだと、地中海の南と北で全く生活水準が違うという状況が生まれてきます。それは、ヨーロッパにとって潜在的な移民への圧力になっていくでしょう。

 ヨーロッパは、1960~70年代から労働力不足を補うために移民を受け入れてきましたが、結論から言うと、移民政策が成功したケースはないと言わざるをえません。

神保  欧州統合の基礎となる人の移動の自由と共通の労働市場は、EU市民の権利を大幅に拡大しました。しかし、移民・難民の流入による人口動態の変化により、現在は国家の逆襲が始まっている状態です。

 アメリカの人口動態を見ても、ヒスパニックやアジア系の割合が人口構成の中で増えてきていて、白人の比率が顕著に減少しています。アメリカは、人種構成の変化を伴いながら、人口を増やす宿命にあります。

 人口の伸びる国と衰退していく国の国境を高くし、移動しにくいようにした場合には、当然、きしみが生まれます。それは、新たな紛争の種や貧困の原因になるかもしれません。そうした問題を含めて、人口動態の調整機能が、再び、国民国家の壁によって制約されるという大きな方向に向かっているような気がします。

宮家  ヨーロッパの移民の経験から日本が学べることは何か。とりわけ途上国の動向と日本の未来について考えなければいけません。

 誤解のないように言えば、移民を受け入れること自体が問題だと言っているわけではありません。私は、日本がこれからも生き延びていくためには、何らかの形で外国の人たちと共存しなければいけないと思います。人口が減り、労働力が不足がちになってくる中では、海外から労働力を入れて、日本の文化に慣れてもらい、共存していく。もしくは、共に新しい日本の文化を作るという形で、いい意味での移民政策を取る。そのためには、ネガティブな部分を最小限にするような政策を行うことが必要だと思います。

 2019年4月の入管法の改正では、「移民政策ではなく、あくまでも外国人の労働者に対するビザの発給の増加です」とされています。圏内政治としてはそれでも構いませんが、実態としては移民政策です。しかし、十分な検討やシミュレーションが行われた様子がない。

 だからこそ、ヨーロッパのいろいろな教訓に学ぶべきです。日本に入ってくる外国の方々はヨーロッパとは違いますし、日本独自の受け入れ態勢、共存の方法があるでしょう。それを含めて総合的に考えなければならないと思います。

神保  移民については不案内ですが、高度人材はもちろん受け入れるべきです。そのためには、給料が高く税金が安い、生活環境がいい、子供の教育環境がいい、社会が開かれている、安心・安全であるなど、よりよい労働環境を作っていく必要があります。特に待遇と税制が決定的です。会社は法人税も含めて、いい人材を取り込む態勢作りが必要です。

 一方、非熟練労働の分野は、素人が考えても人材が足りない分野が出ているのは明らかです。介護や看護など高齢社会におけるケアワーカーは絶対的に不足しています。幼児教育の保育士、建設業やコンビニ、外食産業の人材も足りません。さらに、農業や水産業などを含めて、外国人がいないと成り立たない産業が地方には多く、死活的な問題です。

 ただ、少しポジティブに考えると、外国人の受け入れと女性の活躍を絡められます。日本では、優秀な女性でも結婚して子供ができると会社を辞めて家庭に入ることがあまりに多い。これは経済発展にとって間違いなくマイナスです。女性がしっかりオフィスで働ける環境を、力ずくでも作っていくことが大事です。

 そのためには、シンガポールや香港のように、家事代行サービスを本格的に事業化して女性の活躍をサポートすることも考えられる。足りない労働セクターを外国人で補うだけでなく、労働セクターに出られない日本の人材を活かすために外国人に働いてもらうことも考えるべきです。



将来を見据えた移民受け入れ議論を


宮家  この問題を国会で議論すれば、移民なんてとんでもないという議論から全面的な賛成論まで、ありとあらゆる意見が出てくることでしょう。その議論の一つひとつにメリットとデメリットがあるから、おそらく収拾がつかなくなる。日本では、この間題を冷静に議論する場さえ、まだできていません。

 そのことを前提に申し上げれば、日本の歴史を考えると、常にいろいろな国の人たちが流れ着いて文化を作ってきました。私たちは多様な文化を受け入れ、咀嚼し、育んで、共通の文化を作ってきた能力のある民族です。そのことを日本人が認め、祖先と同じことをまたやらなければいけない時期に来ているのだと、まずは認めるべきです。

 ただし受け入れてきたのは、近隣の国の人々がほとんどで、現代のように地球の裏側から来たり、全く宗教の違う人が来たりするのは新しい現象です。しかし、日本はそれほど差別的な国ではないと私は思います。

神保  私も高校生の頃は多文化共生を全面的に支持し、社会は徐々に多様化していく趨勢にあると考えていました。しかし、世界の人口動態のマクロな変化やそこで生じる労働力移動に対して、国境の果たす役割は決定的だと改めて認識しています。

宮家  自分が属する文化に他の文化を持った人が入ってくれば、全く同じようには扱えません。それを外から見れば差別になります。差別のない国はありません。アメリカでは差別があることを前提に、その弊害をどれだけ減らすかという議論をしています。日本も差別があることを前提に、いかに最小限にできるかという議論ができるような国にならないと、本当の差別はなくなりません。

神保  日本の政策決定ではしばしば十分な議論をせず、なし崩し的に状況を作ってから、「仕方ない」と受け入れることになりがちです。

宮家  この問題は、後追いで議論をするようでは駄目です。さきほど神保さんがフィリピンの出生率が下がっているとおっしゃいましたが、実はベトナムもタイも下がっています。日本は税金も生活費も高いけれど、それ以上の給料が払えるから東南アジアからいい人材が集まる、と言っていられた時代は、終わりつつあります。

 韓国は日本と同じように人口減少に直面しているし、いずれは中国もそうなります。熾烈な外国人人材の争奪戦がすでに始まっているのに、日本国内で行われている議論はあまりに能天気です。対応が遅れて優秀な人材が確保できなくなれば、それこそ30年後、50年後に禍根を残すことになるでしょう。