ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2019.12.17
本論文では、第二次世界大戦前の日本の電力業を対象に、詳細な設備別、プラント別、企業別データを用いて、合併に関する企業の私的インセンティブと合併の社会的な価値の間の乖離を実証的に検討した。この研究において重要な点は、当時の日本に合併規制がなく、企業の自由な選択の結果を観察できることである。本論文の主要な論点の一つは、物的資産の構成や顧客基盤が合併企業間で相違する程度が大きいほど、設備稼働率の上昇やアウトプットの増加を通じて、大きなコスト・シナジーが生じたことである。しかし、こうしたシナジーは企業による合併の意思決定には影響を与えず、企業は近接する企業を合併相手として選択する傾向があった。これらの結果は、企業の合併に関するインセンティブが社会的厚生と乖離する可能性があることを意味している。
Compatible Mergers: Assets, Service Areas, and Market Power(英語) (PDF:220KB)