コラム 国際交流 2019.11.27
◇ 本年3Qの実質GDP成長率は、前年比+6.0%と前期に比べ0.2%ポイント下回った。米中摩擦の悪化を背景とした輸出の先行きの不確定性の強まりが製造業設備投資の拡大意欲を後退させたほか、自動車販売の回復が遅れたことなどが要因である。
◇ 先行きについてもこれらの要因は当面、大きな変化は見られないとの予想から、緩やかな減速傾向が続く見通しである。4Qも3Q並みの6.0%、19年通年では6.1~6.2%、来年は5.8~6.0%との見方が一般的である。
◇ これにより、2020年の実質GDPを2010年の2倍にするという従来の国家目標が達成できないことはほぼ確実となった。この点については、「改革の推進を犠牲にしてまで、2.0倍にこだわる必要はない」との見方が広く共有されている。
◇ 輸出の鈍化傾向にもかかわらず、輸入の減少により3四半期連続で外需が成長率を大きく押し上げた。これには米中貿易摩擦に伴う米国産品に対する輸入関税引き上げの影響に加え、中国製造業の設備投資伸び悩みによる資本財の輸入減少が影響した。
◇ 米中摩擦、国内経済改革の影響で、設備投資、インフラ建設は緩やかな回復傾向に留まるほか、不動産開発投資も足許の2桁の高い伸びがそのまま続くことはなく、徐々に伸び率が低下していくとの見方が一般的であるため、投資全体として成長率を押し上げる力は乏しい。
◇ 自動車販売の不振が続いているが、販売不振の中心車種は7~10万元の小型車であり、購買層は主に地方都市の「中の中」以下の所得階層。一方、都市部での高級車販売は堅調持続。自動車を除けば消費全体はサービス産業、eコマースの好調持続を背景に引き続き堅調に推移している。ただし、来年以降は減税効果の一巡から可処分所得の伸び率が低下し、消費全体の伸び率を押し下げる可能性が指摘されている。
◇ 電機自動車補助金が打ち切られることなどを背景に、20年以降、地場の中小メーカー、EVスタートアップの多くが倒産に追い込まれる見通し。加えて、業績の悪い内外大手自動車メーカーを含めて整理淘汰が進み、業界再編に向かうと見られている。
◇ 米中摩擦の激化にもかかわらず、日本企業の対中ビジネス姿勢の積極化が続いている。投資計画について様子見の姿勢をとっても、従来からの投資計画を縮小する事例は少ない。あるメガバンクの調査でも取引先企業の9割以上の企業が投資計画の変更なしと回答しており、米中摩擦の影響は極めて限定的なもののとどまっている。
中国経済は米中摩擦の悪影響もあって緩やかな減速傾向が持続 ~中国政府は成長率より改革推進を重視する姿勢を堅持~ <北京・広州・深圳・香港・上海出張報告(2019年10月20日~11月2日)>