コラム 国際交流 2019.10.21
◇ 米国政府による対中経済制裁は8月初めから9月初めにかけて一段と激化し、米中両国間の貿易摩擦は報復合戦による激化一色の様相を見せていた。ところが、9月中旬以降、トランプ政権に若干ながら軟化の兆しが見られ始めている。これは貿易摩擦の悪影響が米国で表面化する中、トランプ大統領に対して対中政策の修正を求める声が強まっていることや株価の不安定な動きへの懸念等によるものと見られている。
◇ 上海米国商会の中国現地米国企業向けアンケート調査結果によると、19年に投資拡大を見込む米国企業はアンケート回答企業全体の47.1%に達した。これは前年(61.6%)に比べ減少しているが、依然として約半数を占めている。また、今後5年の業績改善を期待する企業の比率は61.4%と、過去の80~90%に比べて下落した。とは言え、こちらもまだ6割以上の企業が先行きに対する積極的な見方をしているとの見方も可能である。
◇ 米国の農民や企業の間では、トランプ政権が米中貿易摩擦を長期化させることに対して、反発する姿勢が広がりつつある。ただし、国民一般レベルでは依然としてトランプ政権の対中強硬政策を支持する声が強い。これに関して政治家は、今後の経済情勢の変化を背景に、一般国民がトランプ政権の対中強硬政策に対して徐々に反対姿勢へと転じる可能性があることを懸念しており、現状を決して楽観していない由。
◇ 米国の中国専門家は、トランプ政権も習近平政権も、足許の貿易交渉の狙いは貿易摩擦沈静化のためのミニディール成立にあるとの見方で一致している。先行きについては、トランプ大統領は大統領選挙直前の20年10月にビッグディールを狙っており、これに合わせて今後米中間の協議が進められると予想している。
◇ ファーウェイは中国国内市場で得た巨額の利益を外国市場への参入に投入できるのに対し、外国企業は中国市場で巨額の利益を得る機会を奪われており、競争条件が不公平であると指摘されている。こうした米国・欧州側の強い不満に対して、中国政府が20年1月の外商投資法の施行徹底により、競争条件の公平化をどこまで実現できるかという点が、今後の米中摩擦の重要な争点となると考えられる。
◇ 自由貿易体制を志向する国々は二国間の措置により相手国に圧力をかける政策を回避し、多国間の枠組みによるルールに基づく貿易交渉を重視する。これに対して、トランプ政権と習近平政権が応酬し合っている経済制裁は二国間の措置であり、自由貿易に反しているとして米国の有識者は両国を厳しく批判している。彼らは日本政府が韓国に対して二国間の措置を採ったことにも同様の観点から批判的である。