メディア掲載  財政・社会保障制度  2019.10.10

厚生労働省新HTA 制度 第8 回 費用対効果評価・本格導入の概要と論点

医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス Vol.50 No.3 (2019)に掲載

 厚生労働省中央社会保険医療協議会(中医協)による費用対効果評価は、2016年4月より開始された。本来、医療技術の費用対効果評価は、医療技術評価(HTA)の一つの側面に過ぎない。しかし、その制度導入に向けた検討はいわゆるHTAと称され、本「厚生労働省新HTA制度」シリーズ論文でも、その解説と論評を行ってきた。

 2016年からの試行的導入は、高額な医療技術の増加よる医療保険財政への影響についての懸念に対応することが目的とされ、財政影響や革新性、有用性が大きい医薬品・医療機器がその対象となった。実際、Fig.1に示される流れに沿って、医薬品7品目、医療機器6品目について、企業によるデータ分析(費用効果分析)の提出、第三者による再分析、総合的評価(アプレイザル)が行われ、増分費用効果比(ICER)を用いた価格調整が行われた。その結果は、2018年4月よりの改訂価格に反映された。新製品についても、抗がん剤2品目、循環器手術の機器2品目の評価が実施された。治療方法が十分に存在しない希少疾患(例えば、指定難病血友病、HIV)に用いる医薬品・医療機器や、未承認薬等検討会議及びニーズ検討会からの開発要請品目及び公募品目は、評価対象から除外された。

 わが国の国民皆保険の下では、有効性・安全性等が確立された医療は基本的に保険適用していることから、費用対効果評価の結果は価格調整に用いられ、欧州で実施されているような保険償還の可否の判断には使われなかった。すなわち、中医協による新HTAは、世界初のICERに基づく価格決定であることが大きな特徴となった。

 そして、3年間の試行的な実施を経て、2019年4月より制度化され、本格的に運用されることとなった。そこで今回は、試行的導入からの変更点を中心に、新制度の概要と論点について考える。・・・



<医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団より許可を得て医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス Vol.50 No.7, p.390~397 (2019)より転載。同機構への許可なく無断で記事転載を禁じる。>

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