昨今の日韓関係は戦後最悪と言われる。そもそも、今回の問題の発端は、2018年10月30日の韓国大法院(最高裁)での、元徴用工をめぐる判決にあった。韓国の元徴用工の個人請求権を認めた控訴審判決を支持し、日本の企業に賠償金(1人あたり約1千万円)の支払いを命じたのだ。当然、日本政府は反発した。政府は、その問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取り、安倍晋三首相は「判決は国際法に照らして、あり得ない判断だ」と厳しく批判した。
一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、司法の独立性を理由に速やかな政治的対応をとろうとはしなかった。さらに、11月21日、事態は悪化した。慰安婦問題を初めて外交決着に導いた朴槿恵(パククネ)前政権に批判的であった文政権は、日韓合意に基づき日本政府が拠出した10億円で韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」を解散してしまったのだ。事実上、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年12月の日韓合意の一方的な破棄であった。
安倍首相は、2019年1月6日のNHK番組で、元徴用工らによる資産差し押さえの申し立てについて「国際法に基づき、毅然(きぜん)とした対応を取るための具体的な措置の検討を関係省庁に指示した」と述べた。それを受けるかのように、政府は本年8月2日、輸出管理を簡略化する優遇措置の対象国(いわゆるホワイト国)から韓国を除外する政令改正を決定した。あくまでも国内の手続き上の問題だとしたが、文政権は、歴史問題を経済問題に転化した報復措置だとして反発した。