コラム  国際交流  2019.09.19

中国経済は安定を保持しつつも米中摩擦の悪影響への懸念が増大~日本企業の投資環境は改善傾向が続き、日本企業も積極化~<寧波・北京・武漢・上海出張報告(2019年7月11日~27日)>

◇ 本年2Qの実質GDP成長率は、前年比+6.2%と前期に比べ0.2%ポイント下回った。1Q成長率は4月から実施された増値税引き下げの前に生じた駆け込み需要により押し上げられていた。2Qはその「水増し」部分が剥落し、伸び率が低下した。

◇ 先行きの見通しについては、米中摩擦が予想以上に悪化したことを背景に、3か月前に比べて予想を下方修正する見方が増えた。政府の経済政策関係者を中心に、年後半も2Q比横ばい圏内の6.1~6.2%程度で推移し、来年は6.0%前後まで低下するとの見方が一般的となっている。これに対して、3Q以降インフラ建設投資の緩やかな増加、乗用車販売の前年比伸び率の上昇等が小幅ながら成長率を押し上げ、年後半の成長率は6.3~6.4%と緩やかな回復に向かうとの見方もある。

◇ 本年の成長率が6.2%、来年の成長率が6.0%の場合、16~20年の平均成長率は6.5%に達せず、20年の実質GDPを10年対比倍増させるという国家目標も達成できなくなる。これについては、今回面談した政府関係者、エコノミストのほぼ全員が「改革の推進を犠牲にしてまで、2.0倍にこだわる必要はない」との見解で一致。

◇ 昨年後半は自動車販売台数前年比の大幅な落ち込みが消費全体の押し下げ要因となったが、今年はそのマイナス要因がなくなることが予想される。このため、本年後半は消費の伸びが前年に比べて高まり、これがGDP成長率の押し上げ要因となると考えられる。なお、好調なネット販売(実物商品ネット販売額1~6月累計前年比+21.6%)、サービス消費を含めれば、消費全体としては引き続き堅調が続いている。

◇ G20に合わせて行われた日中首脳会談において良好な関係が改めて確認されたほか、来春の習近平主席訪日もほぼ確定した。このため、日本企業の対中投資拡大、中国企業との協力関係強化等に対する中央・地方政府の期待は一段と強まっている。 中国でも指折りの日本通として知られる友人は「最近の日中関係は1980年代に戻った。少なくとも今後5年間はこの状態が続くと思う」と語った。

◇ 中国各地の地方政府幹部の外資企業誘致姿勢はこの1~2年、積極化してきている。上海市、武漢市等主要都市の幹部は以下のように考えている。「市政府としては投資環境改善に必要な対策に関する正確な理解が必要である。日本企業として投資環境改善に関する要望が何かあれば、すぐに率直に意見を述べてほしい。そうでなければ市政府として適切な対応策を実施することができない。」


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中国経済は安定を保持しつつも米中摩擦の悪影響への懸念が増大<寧波・北京・武漢・上海出張報告(2019年7月11日~27日)>