地球温暖化は進んでいるには違いない。しかし、どの程度のスピードで進むのか、その将来については、なお大きな不確実性がある。
「2018年は観測史上4番目に暑い年だった」とよく報道されているが、これは裏を返せば、もっと暑い年が3年あったということだ。データを確認してみよう。
地球温暖化の科学的不確実性については、すでに本シリーズで述べた。
不確実性の幅は1990年のIPCCの初めの報告書からあまり変わっていない。温室効果ガス排出量が高い水準で推移した場合、21世紀中における温度上昇は10年あたりで0.3℃(不確実性幅は0.2℃と0.5℃の間)とされていた:
それでは、その後の観測データはどうなっているだろうか。
図は、気象庁による世界の年平均の基準年からの変化である。
2000年から2012年の間はハイエイタス(停滞)と呼ばれる時期で、温度上昇があまり起きていない。その後、2014年から2016年にかけてのエルニーニョがあり、史上最高温度となった。しかしその後、2017年と2018年には温度が下がっている。
この過去の傾向を理解するために、図中でカラーの線をいくつか筆者が付けてみた。赤で書いてある0.073℃/decadeは気象庁による過去100年のトレンドである。こうしてみると、過去40年間ぐらいのトレンドで見ると、だいたいは緑で書いた0.15℃/decade程度の温度上昇に留まっていたように見える。
それで、この後どうなるのか?ということだが、来年も温度は低下して、その後の温度上昇も0.15℃/decade程度なのかもしれない。この程度であれば、100年で1.5℃のペースだから、ゆっくりとした温暖化である。
あるいは、地球規模での温暖化が進むのかもしれない。ただしIPCCのシミュレーションによる予測は、1990年の頃とあまり変わらず、不確実幅は大きい。
急激な温暖化であればリスクがあるかもしれないが、ゆっくりした温暖化であれば、人間は適応してしまうので、たいした被害は出ないだろう。温暖化のスピードがどの程度かということは、とても重要なのだが、いまなお科学的な知見には大きな不確実性がある。