コラム 国際交流 2019.05.31
◇ 本年1Qの実質GDP成長率は、前年比+6.4%と前期並みの成長率を保持した。1Qは対米輸出の減少を主因に下押し圧力が強く、成長率が6%を割ることが懸念されていたが、中国政府は様々な景気刺激策を実施し、6%割れを回避することができた。
◇ 本年通年では、消費、投資はともに堅調を保持し、雇用、物価も安定が続くと見られる。このため、米中摩擦が極端に深刻化しない限り、米国・欧州景気後退の影響である程度輸出が伸び悩むとしても、経済全体が失速するリスクは小さいと見られる。
◇ 輸出の先行きについて、中国国内では悲観的な見方が多かった2月以前に比べると、米中協議はいい方向に向かっているとの楽観論が多くなっていた。これに対して国際経済の専門家等は、米中貿易交渉は難しい交渉となっており最後まで予断を許さないほか、米国経済減速の兆しもあり、今年の予想は極めて難しいと見ている。
◇ 1Qの固定資産投資の前年比伸び率は+6.3%と前期(同+5.9%)に比べてやや増加した。その主な要因は、地方債の発行増加等によるインフラ建設投資の伸び率の回復、および不動産開発投資の伸び率拡大である。先行きはインフラ建設が緩やかな回復傾向、不動産開発投資は堅調持続の見通し。製造業設備投資は伸び率が低下したが、先行きについては、民間中堅・中小企業の資金繰り悪化問題が改善してきていることから、これ以上設備投資の伸び率が低下する可能性は小さくなったと見られている。
◇ 雇用情勢は引き続き良好な状況を保持している。先行きについても、当面雇用の安定が崩れる要因が見当たらないことから、所得環境は今年も引き続き安定的に推移すると考えられる。それに支えられる形で消費も堅調が続く見通しである。
◇ 本年1Qは経済減速懸念が強まっていたにもかかわらず、日本企業は積極的な対中投資姿勢を変えなかった。その主な要因は、①日中関係の改善持続、②トヨタ自動車の積極姿勢堅持、③中国地方政府の日本企業に対する積極的な誘致姿勢などである。
◇ 中国各地の地方政府は、中国市場のニーズが量から質へと転換する状況を踏まえて、高い技術力を有する外国企業との協力関係強化の促進に注力している。とくに米中摩擦が激化した昨夏以降は日中関係を重視する傾向が強まり、日本企業との対話の場を増やす傾向が見られている。そうした対話の場において地方政府は日本企業に対して、投資環境改善に関し、より率直かつ具体的な要望を行うことを求めている。
中国経済は本年第1四半期の経済失速リスクを克服して安定軌道へ~マクロ経済刺激策の集中実施効果で民間企業、消費者のマインドが改善~<大連・北京・上海出張報告(2019年4月15日~27日)>