ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2019.05.10

ワーキング・ペーパー(19-004E)「Growing and collapsing bubbles」

本稿はワーキング・ペーパーです

 土地や株式などの資産価格について、一般的には、バブルの発生と崩壊は大きな景気変動を発生させ、経済厚生に与えるネガティブな影響が大きい、と考えられている。しかし、経済理論上の合理的期待仮説と整合的な合理的バブル理論では、バブルは経済厚生を改善することがあり、また、バブル崩壊のタイミングも予測できないものであった。

 本稿では、Franklin Allen and Douglas Gale (2000) "Bubbles and Crises," Economic Journalのリスクシフティング効果を無限期間の一般均衡モデルに導入し、その影響を分析した。リスクシフティング効果とは、投資家は銀行からの借入資金を使ってバブル資産に投資をするが、もし、バブルが崩壊するなどして資産価値が下がったら、銀行からの借入金については債務不履行を起こすことができる、という環境で発生する。この環境では、投資家はバブル崩壊のリスクを、銀行に押し付ける(シフトする)ことができるので、バブル資産を高値で購入することをためらわなくなる。その結果、バブル資産の価格は一層、高い値段に押し上げられる。この効果をリスクシフティング効果という。

 本稿で示されたのは次の二つの結果である。

 第一に、リスクシフティング効果でバブル資産の価格が高値になっている経済では、バブル崩壊のタイミングを構造パラメータによって予測することができる。

 第二に、バブルの膨張を抑制するためには、引締め型の金融政策(金利を引き上げることなど)はバブル縮小に効果的であるが、金融規制強化(投資家に信用割り当てを行うことなど)はむしろバブルを増幅してしまう可能性がある。