メディア掲載  グローバルエコノミー  2019.04.15

平成経済の回顧

共同通信より配信

 約30年間に及んだ平成の時代が終わりを迎えようとしている。平成元年に大学でテニュア付き(終身雇用)の職を得た筆者にとっては特に感慨が深いものがある。

 平成元年の日本経済はいわゆるバブル景気のピーク近くにあり、そのため、平成を回顧するテレビ・新聞等の特集では、平成の経済をバブルから「失われた10(20)年」へという描き方をするものが多い。確かに平成の初年以降、経済成長率は大きく低下し、また1990年代には金融システムに深刻な危機が生じた。

 しかしその一方で、平成の期間、日本経済は緩やかながらも着実に成長してきた。平成元年と平成29年を比較すると、日本の実質GDPは1.38倍に増加しており、人口1人当たりでも1.34倍となっている。インターネットや携帯電話の普及など、GDPに十分反映されない生活の利便性の向上を考慮すると、生活水準の上昇はより大きなものであろう。

 いうまでもなく課題もある。この間に他の国々は、より速い経済成長を実現した。その結果、平成元年に世界のGDP合計の約15%を占めた日本は、平成29年にはシェア約6%に後退し、経済規模でアメリカと中国との間に大きな差が生じた。国の財政の悪化も深刻である。平成元年予算で11%だった一般会計の公債依存度は、平成29年度には36%となっている。年々の財政赤字の累積の結果、政府債務残高のGDP比は同じ期間に69%から237%という危機的水準に上昇した。

 財政悪化の基本的な背景として、人口高齢化に伴う社会保障費の増加がある。しかし平成の歴代政権が、それを前提とした財政構造改革に十分に取り組んでこなかったことも財政悪化の原因となっている。高齢社会に対応した財政構造を構築する課題が次の時代に先送りされたのは残念である。