コラム  国際交流  2019.04.11

米中貿易摩擦をめぐる米国および欧州の最新動向<欧州米国出張報告(2019年2月25日~3月15日)>

◇ 3月中に予定されていた米中首脳会談が延期された理由は、中国政府が米国側の要求に応じて提示した譲歩の内容に関して、実効性を検証する制度的枠組みを整える準備に時間を要するためであると言われている。

◇ 一昨年の秋以降、急速に悪化した米国の対中感情は引き続き改善の兆しが見られていない。ワシントンDCで多数派の人々は、自由を尊重するグローバル社会の秩序形成を損なう悪者として中国を捉え、中国を孤立させ、封じ込める政策を主張する。

◇ 米国内の中立的な中国専門家によれば、米国で発表される中国に関する多くの文章は、主張の根拠となるデータや情報の出典が明示されていないものが多いほか、事実ではないことを事実として議論を展開する無責任な内容も目立っている由。

◇ 米国の要求を受けて中国政府が示した譲歩の中身について、中国専門家は一定の評価をしている。しかし、ライトハイザー通商代表、ナバロ国家通商会議委員長等トランプ政権内の強硬派は不十分であるとして、さらなる譲歩を求めている。

◇ 対中強硬派は中国に対して「封じ込め」を基本姿勢とすべきであると考えているため、中国が中身のある譲歩をしたとしても、評価しようとしない立場に立っている。

◇ 最近は議会の方が政府以上に対中強硬姿勢を強めている。強硬姿勢は与党共和党、野党民主党とも同様の傾向である。その背景には選挙民から中国に対する弱腰姿勢を批判されたくないということが主な動機になっていると言われている。従来比較的親中的な立場が多かった産業界も中国に対してやや厳しい立場へとシフトしている。

◇ グローバル企業が中国市場から離れることができないというのは全世界の共通認識である。米国政府が警戒するのは、日本企業が中国市場開拓を継続することではなく、IT、AI、ロボティクス等戦略的に重要な技術に関する中国への技術移転である。この点は日本企業も中国ビジネスの将来リスクとして考慮しておく必要がある。

◇ ワシントンDCの対中強硬姿勢に対する支持は当地特有のものである。全米各地では、中国との良好な経済関係が存在しているため、DCほど反中一色ではない。

◇ 米国政府は中国への技術流出に対する強い警戒感から、理科系の研究者を中心に中国人留学生が米国企業で働こうとしてもビザを発給しないよう制限を強化している。

◇ 英国のEU離脱問題については先行きのプロセス、着地の方向は全く見通しが立たない状況が続いている。一方、フランスにおけるイエロー・ジャケット運動については、マクロン政権は無事に収束させることができるとの見方が大勢となっている。


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米中貿易摩擦をめぐる米国および欧州の最新動向<欧州米国出張報告(2019年2月25日~3月15日)>