レポート  国際交流  2019.04.04

CIGS 櫛田健児セミナー 「日本には伝わらないアメリカ型民主主義の制度設計とインプリメンテーションの狭間-世界を振り回す米国内政治の本質的な力学を歴史的政治経済の観点で解説-」-発表要旨・質疑応答要旨

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2018年12月12日に、スタンフォード大学 アジア太平洋研究所日本研究プログラム リサーチスカラー 櫛田健児氏(CIGS International Research Fellow)のセミナーを開催しました。(モデレーター:栗原潤研究主幹)。これは同セミナーの「発表要旨・質疑応答要旨(日本語)」です。



講演趣旨
 アメリカの国内政治の本質的な力学は残念ながら世界各国にとって全く他人事ではなくなった。トランプ政権誕生の謎と、そのショッキングな運営方法に引っ張られた米国の行動は世界を振り回し、これまで一部の政治学者にしか関心がなかった米国政治の本質的な力学を一般社会に広めるのが急務となった。
 そもそも過半数を取らなくてはいけない直接投票と一般的に思われている大統領線で、なぜ得票率が下回った候補者が大統領になったのか?その細かい制度設計は歴史的にはどこから来たのか?
 また、アメリカでの一票の格差は日本に比べて飛躍的に高いが、なぜ民主主義の手本とされる米国がこのような状態になったのか?ある程度は合衆国創立時の制度設計だが、近年極端に加速している部分もあるのはなぜか?
 最近の民主党、共和党支持者の世界観が極端に二極化しているが、これはなぜなのか?発端は南北戦争という国家分断に遡る原因がある。元々、南北戦争は奴隷制度の上に乗った農業経済と工業化という異なる政治経済システムの社会的互換性が薄まったことによって引き起こされた。敗北した南部を合衆国に戻す過程で有権者を極限に絞り込むことを黙認した連邦政府の政治的な妥協が皮肉にも1960年代の民主主義強化の動きで再び表面化し、政党のあり方に大きな変化をもたらし、社会の分断を強化した。では、州と連邦政府の関係は?
 アメリカ合衆国創設の時点では政治政党は想定されず、大統領の力も非常に限定的であったが、なぜ現状に至ったのか?
 本セミナーではこのような問題意識を並べあげ、数々の具体的な、現在の日本では報道されない米国の政治力学のインプリメンテーションの現状と、その歴史的背景を解説する。『民主主義が死ぬ時』や、『自分の地でアウトサイダー』などの学術書も解説しながら、数多くのアメリカのニュースを、残念ながら今は誰もが知らなくてはいけない米国型民主主義を理解する上で必要なフレームワークを紹介しながら、当てはめて伝える。

→「講演要旨」全文を読む
講演要旨PDF: 574KB
→「質疑応答要旨」全文を読む
質疑応答要旨PDF: 360KB

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