コラム  国際交流  2019.02.22

2019年の中国経済は緩やかな減速傾向の中で安定を保持する見通し~改革推進の副作用、米中摩擦のリスクとマクロ政策とのバランス確保が課題~<成都・北京・上海出張報告(2019年1月16日~1月31日)>

◇ 昨年4Qの実質GDP成長率は、前年比+6.4%と前期(同+6.5%)に比べて伸び率が若干低下した。18年通年では同+6.6%だった。

◇ 4Qの成長率低下要因は、第1に、米中貿易摩擦による関税引き上げ(18年7月以降10%→当初予定19年1月以降25%)前の駆け込み輸出の反動減の表面化。第2に、自動車、高級家電、スマホの販売減少を主因に消費の伸びが低下したことである。

◇ 足許は18年3Q以降の緩やかな減速傾向が続いているが、消費、投資とも堅調を保持しており、雇用、物価も安定していることから、米中貿易摩擦の影響で輸出がある程度減少するとしても、経済が失速するリスクは極めて小さいとの見方が大勢。

◇ 先行きを展望すれば、19年1Qをボトムに成長率は毎四半期ごとに徐々に改善し、19年通年では同+6.2~6.3%に着地するとの見方が多い。上期は同+6.1~6.2%、下期は+6.3~6.4%と年後半にかけて尻上がりに回復する見通し。

◇ 現在協議中の米中交渉について、中国国内では、25%への関税引き上げは米国経済へのダメージが大きいこと、昨年12月1日の米中首脳会談でトランプ大統領が好意的な姿勢を示したことなどから、ある程度の妥協を期待する見方が一般的。

◇ 中国政府は、喫緊の課題である国内改革を優先し、対米協調路線をとっているが、米国からの外圧を利用して、国内の改革反対勢力を押し切り、改革推進を加速させるべきであるとの主張も少なからず見られている。

◇ 本年1Qは下押し圧力が強く、実質GDP成長率が6%を割る可能性もある。中国政府は1Qが6%を割らないよう、年初から様々な景気刺激策を実施している。

◇ 18年2月の第19期三中全会の決定に基づき、党中央の国務院に対する指導が強化され、経済政策運営の機動性の向上および国務院各部門間の連携強化が図られた。

◇ 米中摩擦が激化し、米国からの圧力が強まったとしても、欧米主要企業は積極的な対中投資姿勢を変えることは考えない可能性が高いとの見方が多い。

◇ 日本国内のメディア報道では中国経済に関する悲観論が強調されているため、本社内では中国事業に対する慎重論が出ている企業が多い。しかし、日系大手自動車企業3社がいずれも積極姿勢を強めていることもあって、日本企業全体の対中ビジネスへの取り組み姿勢も引き続き積極性を保持している。


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2019年の中国経済は緩やかな減速傾向の中で安定を保持する見通し~改革推進の副作用、米中摩擦のリスクとマクロ政策とのバランス確保が課題~<成都・北京・上海出張報告(2019年1月16日~1月31日)>