ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2019.02.05

ワーキング・ペーパー(19-002E) 「The Effects of Lender of Last Resort on Financial Intermediation during the Great Depression in Japan」

本稿はワーキング・ペーパーです

 第一次世界大戦後の日本は金融システムの慢性的な不安定性に直面しており、その下で日本銀行は最後の貸し手(LOLR)として流動性供給を行ったが、その際に日銀は、供給対象を自行と取引関係を持つ特定の銀行に限定した。この状況は、金融仲介に対する最後の貸し手機能の影響を検証するための擬似的な実験の機会を提供する。この点に着目して銀行レベルのデータを分析した結果、大恐慌期の銀行パニックの下で、日銀の取引先銀行はそれ以外の銀行より有意に高い預金・貸出増加率を記録した一方、銀行パニック発生前にはこのような差違が見られなかった。さらに日銀の取引先銀行は銀行パニックの下での休業確率が低かったことも示された。取引先銀行の選別に関するセレクションバイアスの可能性を考慮して、各銀行の本店とそれにもっとも近い日銀の本店ないし支店との間の空間的距離を操作変数として用いた分析を行ったが、その場合にも上と質的に同じ結果が得られた。これらの結果は、中央銀行の流動性供給が金融逼迫時に金融仲介機能を支える役割を担い得ることを示唆している。