メディア掲載 グローバルエコノミー 2019.01.23
昨年末、日本で相次いで経営者の報酬に関する大きな問題が顕在化した。一つは日産のカルロス・ゴーン元会長の報酬、もう一つはいわゆる官民ファンドの日本産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長等の報酬をめぐる問題である。
ゴーン氏については、高額の報酬の一部を有価証券報告書に記載してこなかったとして東京地検が金融商品取引法違反の罪で起訴した。違法行為の有無については、今後の裁判の過程で事実の詳細が立証されるまで予断を持つべきではないが、違法行為の有無とは別にマスコミ、インターネット上等では、ゴーン氏に対する年間10億~20億円の高額報酬そのものに対する批判的な意見が散見された。こうした批判はJICに関する問題にも通底する。
JICの田中社長と経済産業省の間で昨年9月、年間固定給1550万円プラス短期業績報酬という報酬に関する合意が結ばれた。しかしこの報酬スキームは高額にすぎるという政治的な批判をうけて経産省がその撤回を申し入れたため、田中社長を含めて民間から選任された取締役9名全員が辞任する結果となった。
こうした高額報酬批判は、人々の報酬は人材市場で決まるという基本的な原理についての理解が、日本には依然として浸透していないことを示している。優れた経営者は企業価値を大きく引き上げるため、彼・彼女の報酬は世界の人材市場で高騰している。日本の企業やファンドが優れた経営者を雇用したいのであれば、世界の人材市場で内外の企業と競争するしかない。そして人材獲得競争の最も有力な手段が報酬である。日本政府は、経済のグローバル化を標榜してきた。しかしJICのケースは、その政府がグローバル標準の行動をとっていないことを示している。