ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2019.01.22

ワーキング・ペーパー(19-001E) 「Branch Banking and Regional Financial Markets: Evidence from Prewar Japan」

本稿はワーキング・ペーパーです

 日本の銀行セクターは20世紀前半に大きな産業組織上の変化を経験した。その一つは支店ネットワークの拡大である。この論文では福島、鳥取、熊本、宮崎の4県に関する銀行店舗(本店および支店)レベルのデータを用いて、支店銀行制度が地域経済に与えた影響を分析した。これらの県を対象にしたのは、銀行店舗レベルデータの利用可能性に加えて、これら4県が大都市金融市場から離れた地方に位置していることによる。分析の結果、第一に、支店ネットワークの拡大は貸出に関するプラスの規模効果を持っていたことが明らかになった。しかし第二に、同じ市・郡に本店を置く銀行の店舗と比較して、他の郡・市、特に他の県に本店を置く銀行の支店は地域内における貸出性向(地域内で吸収した預金に対する地域内での貸出の比率)が有意に低いことが示された。特に東京、大阪等の大都市に本店を置く銀行は地方の支店ネットワークを用いて地方から資金を吸収する傾向があり、そのことが地域内の産業金融にマイナスの影響を与えた。