メディア掲載  エネルギー・環境  2018.12.10

沖縄の繁栄を支える化石燃料の貴重な役割-観光の振興で地域平和に貢献を-

エネルギーフォーラム EP REPORT 第1937号に掲載

 沖縄県の本島と宮古島に行ってきた。観光産業が絶好調で毎年、海外旅行者数が20%ないし30%も増加している。人口も増え電力需要も伸びている。

 島々の経済は、化石燃料、なかでも石油が支えている。人々はジェット燃料を使って飛行機でやってくる。物資を運ぶ船はディーゼルエンジンで動いている。こういった往来が無ければ、島々は繁栄しないし、生活もできない。沖縄は13世紀以来、日本本土、中国、韓国などとの交易で賑わってきた。これは今も変わらない。

 島々の中の移動は自動車が主である。経済規模が限られているので、鉄道は発達しなかった。電力供給は、本島では石油、石炭、LNGと、火力発電がバランスよく利用されている。宮古島ではディーゼル発電が主力である。

 化石燃料は頼りになる。発熱量が高く、輸送や貯蔵が容易で、利用技術が確立していて、必要な時に必要なだけ火力が得られるからだ。台風が直撃しても、土用波で海が荒れても、発電に支障を来さないよう、敷地内のタンクには石油が蓄えられている。

 沖縄の電気料金は、やや高い。だがこれはやむを得ない。規模の経済が働かないからだ。島々では発電所は小さくならざるを得ず、効率に限りがあり、コストも高くなる。資材や部品は本土から海を渡るので輸送費が掛かる。このため製造業はあまり発達しなかった。それで電力需要家は小口ばかりで、大口が少なく、これまた送配電コストの増加要因になる。


再エネにどこまで期待できるか

 ディーゼル油は高価だから、島々では太陽電池の方が安い、という意見がある。しかし、そう単純ではない。

 少なくとも現状では、まだ太陽電池の方が高い。それに、島々の電力需要のピークは夕方の7~8時ごろなので、太陽電池にはピークをカットする効果はなくて、日中、ディーゼル発電を焚き減らす効果しかない。従ってディーゼル発電設備はいずれにせよ必要であり、 太陽電池が代替する訳ではない。

 宮古島では約2万kWの太陽電池が導入されている。電力需要が少ない時期には、ディーゼル発電機の出力を最低限まで下げても、電力供給が需要を上回るため、太陽電池の出力制限は避けられない見通しである。今後、太陽電池がもっと安くなれば、さらなる導入もあり得るが、ピークを抑制する効果がないこと、および出力制限が必要なこと、の2点を割り引かなくてはならない。

 宮古島では、太陽電池やバッテリーの電力系統連系の先進的な実証試験設備が整備されてきた。今後も試験を続けることで、日本における合理的な再生可能エネルギーの導入戦略の構築につながることに期待したい。

 那覇市から30分ほど船に乗り、慶良間諸島でダイビングをする。光にきらめくカラフルなサンゴ礁、どこまでも透き通った水、雲のように群れるキビナゴ、鮮やかな黄色のチョウチョウウオ、ゆったり泳ぐ大きな青いブダイ......。生命が溢れていて、自分が溶け込む感覚だった。沖縄のサンゴ礁はよそとは一味違うと聞いていたが、本当だった。

 さて、地球温暖化により、あと0.5℃上がるだけで、サンゴ礁の大半が失われるという意見がある。ここは大丈夫だろうか。

 まだ科学的にはっきりしていないが、おそらくは、高温に弱いサンゴはなくなり、強いサンゴが残る。そして、観光のためには、高温に強くきれいなサンゴを意図的に植え育てることが必要になるだろう。このような研究はまだ日が浅く、加速する必要がある。


災害に対応した歴史

 人間が自然と闘い、また管理するのは、離島では当然だった。離島は人が住むには厳しい環境だからだ。

 宮古島の住宅は、戦後しばらくは粗末な木造だった。このため、台風で三度も壊滅的被害にあった。今ではどの家もコンクリートでがっちりと造ってあるので、びくともしない。

 また宮古島は雨は多いものの、サンゴ礁が隆起してできた石灰岩の地層があるため、雨が降っても半分は地下から海へと流れてしまった。このため旱魃で、島を覆うサトウキビ畑はたびたび被害をうけた。

 そこで地下ダムが建設された。これは、地中に高さ60mに上るコンクリート壁を構築し、水をためて、ポンプで汲み上げ、農業用水とするもの。これで旱魃はなくなり、今では青々としたサトウキビ畑に勢いよく散水する光景が見られる。

 沖縄は観光に力を入れている。台湾、韓国、中国など、海外から続々と旅行客が来る。これはもちろん、経済的に良いことだ。だがそれ以上に、日本で楽しい体験をしてもらい、親しみを持ってもらうことこそが重要だ。これが何よりもアジアの平和の礎になる。

 日本は国として、島々の魅力を高めるため、投資をすべきだ。この重要性に照らすならば、化石燃料を使用しCO2が出ることは、しばらくの間、大目に見た方が良い。