メディア掲載 グローバルエコノミー 2018.08.03
日本学術会議は日本の学術コミュニティーの意見をまとめ内外に発信する役割を担う機関であり、現在、課題の一つとして大学改革に取り組んでいる。その一環として先日、内閣府の柳孝審議官から政府における政策の検討状況について説明を聞いた。
政府の大学改革への関心の背景には、生産性の持続的上昇が求められる日本経済において、イノベーションを生み出す場として、大学に期待が集まっているという事情がある。人口高齢化と社会保障費の膨張が進む中で大学に配分できる国の予算には限界があり、大学の財源を多様化することが改革の柱の一つとして説明された。これは喫緊の課題と考える。一方で、予算に限界がある中で、資金を必要としない改革にも並行して取り組むことが重要である。その一つとして大学の組織改革がある。
現在の国立大学では、教員の組織と事務職員の組織が分離されており、各部局の職員は大学本部-各部局事務長という事務系統のラインに属している。そのため、職員はこのラインの中で官僚制的なルールに従って間違いなく事務をこなすよう動機づけられており、教員が研究・教育に関して高いパフォーマンスを挙げることと事務職員の成果が結び付いていない。そのため、教員の研究・教育を制約する煩雑・不合理な事務手続きや慣行が、見直されることなく慣性で長期にわたって維持されるという事態がしばしば生じる。これは個々の事務職員の問題ではなく、大学の組織設計の問題である。
大学の本来の役割は研究と教育であり、その質を向上しなければ、イノベーションへの寄与は期待できない。そのためには事務職員の動機付けを、教員の研究・教育の成果と結びつける組織設計の改革が必要とされる。