コラム  国際交流  2018.06.22

政策運営の混迷の度合いが一段と強まるトランプ政権~米中貿易摩擦の展開とそれに対する欧米の学者・有識者の見方~<米国欧州出張報告(2018年5月28日~6月9日)>

◇ 3月以降、政権内の政策決定過程はますます不透明となり、トランプ大統領自身の直観的な思い付きに基づく政策運営が常態化し、混迷の度合いが一段と強まっている。

◇ 北朝鮮問題については、トランプ大統領は誰にも相談せず、自分自身の直観に頼って勝手に決めていると見られており、先行きの交渉方針は誰にも予測ができない。

◇ 米中貿易摩擦については、政権内において対中強硬派のライトハイザーUSTR長官、ロス商務長官、ナヴァロ通商製造政策局長と、対中融和派のムニューチン財務長官、クドローNEC委員長の間で意見が分裂しており、こちらも予測不能の状況にある。

◇ 本年11月の米国中間選挙については、経済情勢の改善が続いていることに加えて、歴史的な米朝会談を実現したことから、上下両院とも与党共和党が勝利する可能性が出てきたとの見方が以前に比べて増えている。

◇ 5月中旬、劉鶴副総理がムニューチン財務長官と米中貿易摩擦への対応策について協議した。中国が2000億ドルの対米貿易黒字削減策を提案し、その見返りにZTEに対する制裁が解除され、一旦は米中貿易摩擦が沈静化に向かったかのように見えた。

◇ ところが、5月29日に、トランプ政権はスーパー301条に基づく対中制裁実施を発表した。これは米国有識者にとっても全く予想外だった。この短期間の突然の方針転換の背景には米朝会談をめぐる米中の駆け引きが影響しているとの見方がある。

◇ 貿易摩擦を巡る一連の米国政府の通商政策について、米国内の多くの学者・有識者は、自国としては保護主義的政策を実施しながら、中国に対して自由貿易を強要する姿勢はどう見ても正常ではないとトランプ政権を厳しく批判する見方が大勢。

◇ この間、欧米諸国の間では、中国政府が外国企業に対して先進技術の移転を強制する政策を採用していることおよび中国政府が推進している中国企業の競争力強化を狙う産業政策「中国製造2025」に対する批判が強まっている。

◇ ドイツでは、昨年11月にダイムラーとの資本・技術提携を拒否された中国の吉利が、本年2月に突然、ダイムラーの株式の約10%を取得したことを発表した。これがドイツ企業経営者等の中国の脅威に対する懸念を一段と強めることになった。

◇ 米国内では、最近の中国に対する警戒感の強まりを背景に、中国人技術者による技術流出・盗用が問題視され、ハイテク研究分野への中国人のアクセスを制限する動きが広がっている。


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政策運営の混迷の度合いが一段と強まるトランプ政権~米中貿易摩擦の展開とそれに対する欧米の学者・有識者の見方~<米国欧州出張報告(2018年5月28日~6月9日)>