メディア掲載  グローバルエコノミー  2018.06.07

国家戦略特区制度の抜本的見直しを:規制改革のための社会実験の必要性

共同通信より配信

 国会で論議の的となっている加計学園獣医学部の認可は、国家戦略特別区域(国家戦略特区)制度に基づいて行われた。国家戦略特区は、第2次安部内閣の下、成長戦略の一環として2013年12月に導入された制度である。

 国家戦略特区法は、その目的として、特区で規制改革その他の措置により、経済社会の構造改革を重点的に推進し、産業の国際競争力を強化するとともに国際的な経済拠点を形成することを掲げている。安部首相もさまざまな機会に、国家戦略特区によって規制改革を推進することを強調してきた。

 日本における特区制度は小泉内閣の下で2003年に設定された構造改革特区に始まる。構造改革を旗印とした小泉内閣にとってこの制度は規制改革のための重要政策と位置づけられていた。

 構造改革特区と国家戦略特区はともにその目的として規制改革を含むが、両者の間には本質的な相違がある。構造改革特区制度の特徴として、評価委員会がある。これは特区で行った規制改革の弊害を審査し、弊害がない場合は特区で行った規制改革を全国展開する役割を担っている。すなわち、構造改革特区は、規制改革の社会実験のための制度であった。これに対して国家戦略特区には対応する仕組みが用意されていない。そのため特区で行った規制改革はその地域に固定されることになる。

 一般に規制はレント(超過利潤)を生み資源配分を歪める。構造改革特区は規制改革によってレントを極力排除するための制度であった。他方国家戦略特区はレントを維持したまま、特定地域ないしその地域の特定事業者に分与する機能を持っている。そしてこのことが今日論議されているさまざまな問題の根本にある。規制改革の目的の原点に返って特区制度そのものを見直すことが必要とされる。