コラム 国際交流 2018.05.15
◇ 本年1Qの実質GDP成長率は前年比+6.8%と、前期(同+6.8%)並みだった。先行きは金融リスク防止関連施策の影響で国有企業、地方政府向けの貸出が抑制され、インフラ投資の減速を中心に年後半にかけて徐々にスローダウンするため、通年では政府目標の6.5%前後に着地するとの見方が多い。主な不確定要因は、今のところ米中貿易摩擦のみであり、投資、消費は安定を保持する見通し。
◇ 不動産開発投資は、3~4級都市の不動産在庫がほぼ適正水準まで低下したため、今後は緩やかな回復が続く見通し。
◇ 4月17日、中国人民銀行は中小企業に対する金融面からのサポートの強化を目的に預金準備率を1%引き下げることを発表した。今年は金融リスク防止関連施策により、一部の資金供給が抑制されるため、何もしなければ金融政策全体としては若干引き締め効果が強まる。そこで、人民銀行は、中小企業のサポートに重点を置きながら、引き締め効果を中和するよう資金供給を拡大した。目的は金融政策の中立保持である。
◇ 現在の中国の米国向け輸出は6割が外資系企業によるもので、その中心は米国企業であるため、米国政府が発動する制裁措置の影響を受けるのは米国企業を中心とする外資系企業の割合が高い。韓国及び台湾企業が受ける悪影響も深刻であるが、日本企業については、直接的な悪影響を受ける企業はあまり多くない模様。
◇ 中国政府としては米国との貿易戦争を回避するため、報復合戦になるような厳しい対応は採らないというのが基本的な考え方である。したがって、報復策をとる場合でも米国側を強く刺激しない範囲内の対抗措置になると考えられる。
◇ 欧米企業は中国政府が欧米企業に対して先進技術の移転を強制していることに対する不満が強い。今回の米国の制裁措置は貿易戦争(trade war)というよりむしろ技術戦争(technology war)という性格が強いという見方をしている。
◇ ボアオ・アジアフォーラム開幕式での習近平主席のスピーチは金融、自動車分野等の市場参入規制の緩和、知財保護の強化等の実施、加速を強調した。金融機関等の日本企業は停滞していた改革が「今度こそ動くのではないかと期待している」。
◇ 中国各地の地方政府の日本企業に対する誘致姿勢が本年入り後一段と強まっている。これは、昨年10月の党大会において習近平主席の安定した政治基盤が確保され、習近平政権が指示する政策には反対勢力からの横槍が入らなくなったことが主因。
米国との貿易摩擦に直面する中国~ボアオ・アジアフォーラムで習近平主席が改革開放を加速する方針を表明~<北京・上海・深圳出張報告(2018年4月15日~28日)>