メディア掲載  グローバルエコノミー  2018.05.15

求められる経済政策の時間的一貫性:ノーベル経済学賞受賞者フィン・キッドランド教授の東京大学での講演

共同通信より配信

 東京大学経済学部では、昨年からノーベル経済学賞受賞者を招いて学生とのラウンドテーブル対話を行ってきた。これはノーベル財団の下にあるノーベルメディアが主催するイベントで、東京大学側が選んだ20名程度の大学院生・学部学生がノーベル賞受賞者と親しく質疑応答・意見交換を行う試みである。

 昨年、ミクロ経済学分野のエリック・マスキン教授(ハーバード大学)に来ていただいたのに続いて、先月、マクロ経済学分野のフィン・キッドランド教授(カーネギー・メロン大学)を招聘した。毎回、学生から適切な質問が活発に提起され、受賞者から丁寧な応答があって、双方にとって有意義な対話となっている。

 今年は少人数のラウンドテーブル対話に加えてキッドランド教授による大教室での講義も行われた。講義のテーマは「経済成長と政策」であった。講義の中でキッドランド教授はいくつかの国の間で経済成長のグラフを比較して、対照的な成長パフォーマンスを示す国々について、成長率の差違をもたらし理由はなにかを説明された。

 強調された論点の1つは、経済政策に時間を通じた一貫性がないことが成長にマイナスの影響を与えることである。政策に一貫性がなく、将来の税率に不確実性がある場合、研究開発や設備に対する投資の収益率が不確実になり、それらへの投資の誘因を低下させることによる。

 日本政府は、言葉のうえでは消費税率の引き上げを明確に公約しながら、その都度、理由を付けて公約の不履行を繰り返してきた。そしてその背後には経済政策が政治的思惑によって左右されてきたという事情がある。こうした行動が中長期の経済成長に与えるマイナスの影響について政府は深く反省する必要がある。