メディア掲載 財政・社会保障制度 2018.05.11
2017年4月に新しい将来推計人口が発表された。そこで、年齢階層別、男女別の1人当たり医療費と介護費を使って医療費・介護費が15年を起点として何倍になるかを計算してみた。
日本の人口は15年から60年まで平均年率0.7%ずつ減少する。図のA線は、この人口動態のみを反映した医療費であり、人口減少による医療費減少が高齢化による医療費増加を上回り、医療費が減少し始めるのが30年頃であることを示している。一方、新しく登場する医薬品や医療機器は高価であり、医療費増加要因となっている。その医療費押し上げ効果は、他の先進諸国においても年率1%超と言われている。B線は、A線にこの1%の影響を加えたものである。
人口減少の下でも、医学の進歩とともに医療に対する国民のニーズは増え続けることが見てとれる。
C線は、人口動態を反映した介護費の将来推移である。40年頃まで介護費は医療費の増加を大きく上回るペースで増え続ける。これは、80歳以上人口が急増するからである。したがって、介護費増加が財政赤字に与える影響は非常に大きい。
一方、厚生労働省の医療費・介護費の将来推計には"過大"との批判がよく聞かれる。同省は、12年に作成した将来推計において、15年度における患者等負担を除く医療の給付費を39.5兆円、利用者負担を除く介護の給付費を10.5兆円と予測していた。医療費の患者等負担割合は12.3%(15年実績)、介護費の利用者負担割合は9.6%(同)であるから、同省は15年度の医療費を45.0兆円、介護費を11.6兆円と予測していたことになる。これに対して、実績値は医療費42.4兆円、介護費は9.8兆円であった。
さらに厚労省は、25年度の医療給付費を54兆円、介護給付費を19.8兆円と予測していた。これは、患者等負担を含めた医療費を61.6兆円、利用者負担を含めた介護費を21.9兆円と予測したことを意味する。この予測には前提条件として、15~25年度における物価上昇率(年平均1.2%)と賃金上昇率(同2.5%)が反映されている。この非現実的と思える前提条件を図の結果に加えてみると、医療費は60.4兆円、介護費は16.2兆円となる。つまり、実質ベースで比較した場合、同省の医療費予測は筆者とほぼ同じだが、介護費は明らかに過大である。