メディア掲載 財政・社会保障制度 2018.04.04
2017年10月~12月の実質国内総生産(GDP)は、8四半期連続のプラス成長となった。日本経済研究センターは、17年度の実質GDP成長率は内需と外需がバランスよく寄与する形でプラス1.7%になると予測している。ただし、同センターは、その後の実質GDP成長率は18年度1.3%、19年度0.9%に低下すると予測している。
この0.9%という水準は、日本経済の潜在成長率を反映している。潜在成長率については、日本銀行が定期的に作成し発表している。図のとおり、バブル経済であった1980年代後半の潜在成長率は4%を超えていた。それが2010年頃にはマイナスとなり、その後少し上向いたとはいえ、1%以下で低迷している。
潜在成長率は、「労働(就業者数と労働時間)と資本の投入量の平均的な伸びと、それらの利用効率である全要素生産性(Total Factor Productivity)の伸びの和」として計算される。日本銀行は、この潜在成長率を積算する時の各項目も明らかにしている。
たとえば、バブル期にあった1985年度下期の潜在成長率4.32は、労働投入量の伸び率0.67、資本投入量の伸び率2.00、全要素生産性の伸び率1.65の合計である。これらの項目が、2017年度上期には、労働投入量の伸び率0.09、資本投入量の伸び率0.42、全要素生産性の伸び率0.34に低下した結果、潜在成長率が0.85になっているのである。
安倍政権が2018年1月23日の経済財政諮問会議に提出した「中長期の経済財政に関する試算」では、全要素生産性の伸び率を1%(ベースラインケース)~1.5%(成長実現ケース)に設定している。つまり、生産性が飛躍的に高まることを前提に財政再建を論じているわけだが、現在国会で議論されている「人づくり革命」や「働き方改革」で生産性が高まるとは思えない。高等教育を無料にしても授業内容が同じであれば人づくり革命など起きないことは誰にでも想像できる。
医療・介護・福祉の場合、生産性向上のカギとなるのは広域単位で患者情報を共有することにある。他の先進諸国では、この患者情報共有のプラットホームとなる大規模非営利事業体を全国に構築している。開業医はこれらの事業体の傘下に入るのではなく、業務提携で機能分担するパートナーの位置づけである。この仕組みが上手く回るかどうかは、参加者たちの信頼関係にかかっているのである。