ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2018.03.12
工業化は経済発展とマクロ的な所得上昇の鍵であるが、それは人々の所得を均等に上昇させるわけではない。「クズネッツ曲線」に描写されているように、所得分配の不平等化は経済発展の初期段階に広く観察される。また近年の研究が示唆しているように、この局面では所得の世代間の流動性も低い傾向がある。この論文では、工業化の途上にあった20世紀初めの日本について、世代間でリンクされた個人レベルのデータを新たに作成し、工業化過程における所得分配とその世代間流動性の実態とメカニズムを分析した。その結果、上位所得階層の内部では、伝統的社会秩序の影響が残存する一方で、伝統的社会では低い地位にあった人々に、経済界での活動を通じて階層内での地位を上昇させる機会が開かれたことが明らかになった。
Who Grew Rich?: Determinants of Income Distribution and Intergenerational Mobility under Japan's Industrialization(英語) (PDF:877KB)