メディア掲載 グローバルエコノミー 2017.12.08
近年、日本を観光等の目的で訪問する外国人の数が増加を続けている。国際観光振興機構の統計によると、2010年の約860万人から、東日本大震災による減少を挟んで、2016年には約2400万人に増加した。
これをうけて政府は、成長戦略の一環として2020年までに訪日外国人客数を4千万人に増やす目標を設定している。訪日外国人数が増加傾向にあり、東京オリンピックがあるとはいえ、2020年までに4千万人というのは、かなり高い目標である。
観光行政を所管する観光庁は、この目標を達成するため、外国人訪日客の受け容れ態勢整備費用等の財源に充てる目的で、「出国税」を新設するという案を9月に発表した。
今後、有識者会議で検討されるとのことであるが、政策の目的を所与とすれば、それに照らして出国税という手段には疑問を禁じ得ない。
訪日外国人から1人当たり一定額の出国税を徴収すれば、外国人の訪日コストを引き上げ、少なくとも直接的には必ず訪日客数を減らす方向に作用するからである。
もともと、訪日外国人数を増やすという目標は、それが日本の経済成長につながるという発想からであろう。そうであるとすれば、誘致のための財源を出国税に求めるのは妥当ではない。
外国人が日本に滞在して観光をすれば、滞在期間中に宿泊し、食事をし、国内の交通機関を利用する。仮に1人の外国人が日本滞在中に5万円使用するとすれば、その消費税収だけで4千円である。サービスを提供する日本の事業者から得られる法人税等を考慮すれば、税収の増加分はさらに大きくなる。
訪日外国人誘致のための費用には、こうした税収の増加部分を充てることが望ましい。