コラム  国際交流  2017.12.07

ロシア銀行協会代表団の訪日 報告

 11月11日から16日までの日程で、ロシア銀行協会の13名からなる代表団が訪日、日本の金融庁や全国地方銀行協会を訪問し、意見交換を行った。弊所の小手川大助研究主幹が同協会より訪日に関しての支援を依頼されていた関係で、これらの会合に同研究主幹とともに参加し、概要をまとめた。




1.ロシア銀行協会代表団による金融庁訪問

 金融庁において、地域銀行を含めた日本の金融機関の概況および金融庁の役割等に関する説明が行われ、続いて質疑応答が行われた。


(1)日本の金融機関・地域銀行の状況

地域銀行は全国の各都道府県に所在、106行の預金合計は全体の4分の1

 日本の預金については、メガバンクを含む主要行等が全体のおよそ4割(39.4%)を占めているものの、全国に106行ある地域銀行の預金合計は全体の23.0%にのぼり、メガバンクに続く規模となっている。その他については、ゆうちょ銀行が占める割合が12.4%、信用金庫が8.8%、農林中金6.0%、信用組合1.3%と続き、それ以外が9.1%となっている。

 また、預金と貸出の比率(預貸率)を見ると、メガバンクは預貸率が65%なのに対し、地銀は71%、第二地銀は74%と、メガバンクより高い預貸率を示している。

 なお、日本の地域銀行は全国の各都道府県にそれぞれ1行以上存在し、多いところでは4行以上存在する県もある。経営統合なども一部では起こっているが、地域銀行の数が大きく減少するものとはなっていない。

 各地域銀行の規模・収益には、それぞれバラつきがみられる。地域銀行の特色として、地域銀行が所在する都道府県を主要な営業地域としているケースがほとんどであるため、その銀行が所在する各都道府県の経済規模と地域銀行の規模とが、おおよそ比例する傾向にあると言える。



(2)金融庁の役割と組織

時代の変化とともに金融庁の役割も変化、来年度に予定されている組織見直し

 金融庁の主たる役割としては、金融制度の企画・立案や民間金融機関の検査・監督などが挙げられる。金融庁の部局は、現在は総務企画局・監督局・検査局の3局あるが、2018年度には組織見直しが行われ、監督局と検査局とが一体化されることになっている。1990年代からの不良債権問題についてはほぼ解消されたものの、現在では人口減少に伴う国内市場の縮小やフィンテックへの対応など新たな課題が生まれており、それらに的確に対応する組織に変えていくことが見直しの目的である。

 銀行業に関する法的なフレームワークとしては、上から憲法、銀行法などの法律、政令、府令、金融庁告示がある。このほかに、これらを補完するものとして、監督指針と検査マニュアルを策定している。

 なお、銀行に関する法的な観点でいえば、銀行は免許制であるという点が重要であろう。つまり、銀行は簡単に参入できる分野には該当しない。銀行法には、金融庁の監督の権限についての規定もある。一方で、銀行がより良質な金融サービスを提供できるように、金融庁の金融機関に対する検査・監督のあり方については、「形式から実質へ」、「過去から未来へ」、「部分から全体へ」という3つの柱にもとづく見直しが行われているところである。



(3)日本の地域銀行の現状

地域銀行は貸出利ザヤが縮小する傾向、ハイリスクな有価証券等で足元の収益を確保

 現在、日本の地域銀行は、バランスシート上はその健全性に問題はみられない。しかし実際は、人口が減少するなかで貸出競争が行われ、その結果貸出金の収益が悪化するなど、損益が悪化する銀行の数が年々増加傾向にある。こうした銀行は、ハイリスクの有価証券購入や不動産融資等により足元の収益を確保している傾向が強く、将来的な懸念を抱えている。また、地域銀行のなかには、ビジネスモデルの持続可能性に対しての懸念が高まっているところもあり、経営改革に取り組む銀行も出てきている。

 こうした現状のなか、金融庁は、銀行から融資を受ける側である企業に対するアンケートを実施した。その結果、概して、借り手側である企業の状況が芳しくないほど、銀行側の企業に対する取り組みが不十分である現状が見えてきた。逆に、利ザヤを確保できているような成績のいい銀行というのは、銀行が企業を頻繁に訪問し、企業の事業内容を掴み、担保や保証に過度に依存しないような融資を行っているという結果が出た。このような企業は銀行に対して高い満足度を示している。このアンケート結果をもとに、金融庁としては、企業側のニーズに応じた金融サービスを提供することが、銀行の持続可能なビジネスモデルにつながる有力な選択肢であるということを、地域銀行に対して示したうえで、そうした対応を慫慂しているところである。



質疑応答

 質疑応答においては、ロシア側からは、ロシアの金融機関が日本に現地法人や支店、駐在員事務所などの拠点を開設する場合のそれぞれの具体的な規制に関する質問や、ロシアから日本の金融機関への投資、地域銀行を含む日本の金融機関からロシアへの投資に関する規制・制限に関する質問が出されたほか、収益に苦しむ地域銀行への金融庁の取り組み、地域銀行とメガバンクとの規制の違いといった具体的なテーマに関する質問が出され、それぞれに具体的な回答が得られた。

 また、ロシア側からは、日本の地域銀行とロシアの銀行との協力の可能性に関する質問が出され、それについては、日本の地域銀行は海外での事業のノウハウが不十分であり、日本の地域銀行単独での事業展開は難しいが、公的金融機関と連携してロシアのプロジェクトに参画するといった可能性はあるのではないかとの見方が示された。



2.ロシア銀行協会代表団の全国地方銀行協会訪問・意見交換

 全国地方銀行協会側からは、同協会の佐久間会長、西原副会長専務理事、梅森・長谷川両常務理事らが参加したほか、北海道銀行の笹原頭取、第四銀行の宮本執行役員らが参加し、ロシア銀行協会側からは、ロシア銀行協会のセルゲイ・グリゴリヤン副総裁によるプレゼンテーションとロシア銀行協会代表団の各メンバーよりそれぞれが所属する銀行および金融機関の紹介が行われ、それに続いて簡単な意見交換が行われた。

 ロシア銀行協会グリゴリヤン副総裁によるプレゼン、および代表団メンバーによるそれぞれの銀行・金融機関の紹介の内容は次のとおりである。



(1)ロシアの銀行市場とロシア経済の現状

ロシア銀行協会: セルゲイ・グリゴリヤン副総裁

 今回の訪日の目的は、日本の地方銀行の各位と直接知り合い、ロシアの経済状況およびロシアの銀行システムについて概要をご理解いただくことである。そのために今回プレゼンテーションを用意したが、これにより、ロシアにどのようなチャンスがあるかについて概要をお示しできるのではないかと思う。今回のわれわれの訪日により、われわれと日本の地銀の皆さまとの間で今後連携が進んでいくこと、少なくとも皆さまが連携の可能性を検討する端緒となることを願っている。

 まず、ロシアの銀行市場は、日本と比較して規模がずっと小さいのが現状である。これについては、ロシアの金融市場は今まさに発展途上にあるのであり、今後の大きな「伸びしろ」が期待できるという見方ができよう。

 ロシア経済については、資料が示すとおり、インフレ率は3.0%まで収まってきており、石油価格も少しずつではあるが回復基調にある。これにつれて為替レートも回復しつつある。外貨準備高も再び増え始めている。ロシア国債については金利が下がってきてはいるが、3年間で8%のリターンとまだ高い状況にある。この点も、非常に金利の低い日本市場と好対照をなしており、ロシア市場の魅力の一側面をなしている。

 ロシアの銀行の貸出金利と預金金利の差を数値で示しているのでご覧いただきたい。ロシアに比べて日本では、この利ザヤの幅が非常に狭くなっており、日本の地銀などは非常に苦労していると聞いている。ロシアの金利は高すぎるという印象を持たれるかもしれないが、その意味でもまだ発展途上にあり、投資の対象として魅力的と言えるのではないだろうか。

 最後に、スライドの資料に、2016年のロシアの銀行のROEの平均値が9.9%と記されている点についてご説明しておきたい。ここ数年の様々な客観的な経済情勢のもとで9.9%という数値まで落ち込んでいるが、以前はもっと高い水準にあった。また、実際には、今回の代表団メンバーらが所属する銀行を含め、平均値よりはるかに高い数値に回復させている銀行が数多く存在しているということを指摘しておきたい。



  (2)各銀行・金融機関の紹介

AGORA銀行: ユーリー・オトラシェフスキー会長

 AGORA銀行は規模は小さいが、20年前に設立されて以来、ダイナミックに業績を伸ばしてきた民間銀行である。AGORA銀行の戦略的な特徴として他行と大きく異なっている点は、ITの積極的な活用である。マーケット自体が縮小傾向にあるなかで、当行はこれによって収益性を伸ばしてきたと自負している。

 当行の本社はモスクワにあり、ロシア中央部が主要な活動拠点だが、サハ共和国のヤクーツクにも支店を有している。そこではパートナー企業とともに、金やダイヤモンドなどの天然資源の採掘や、「シベリアの力」パイプラインといったプロジェクトにも参画している。その他、サハ共和国の南部での石油・天然ガス・石炭といった天然資源の開発や、住宅・道路の建設、野菜の温室栽培などへの参画を検討している。

 サハ共和国は、日本の企業が長年にわたり積極的に活動してきた地域だが、現在は中国や韓国の企業が積極的に進出している。当行としては、ぜひ日本の銀行と協力したいと考えており、例えば共同プロジェクトへの参加や融資、資本への参加やボードメンバーへの参加など、いずれも極めて透明な形のなかで、相互利益にかなう形での協力を進めていくことを望んでいる。


ライファイゼン銀行: アナスタシヤ・エフスチグネエヴァ金融機関部長

 ライファイゼン銀行において、私は日本を含む海外の銀行との協力に関する部門で責任者を務めている。当行は日本の複数のメガバンクと長年にわたり協力関係を構築してきたが、日本の地方銀行とも一緒に仕事をしていきたいと考えている。

 当行はオーストリアのライファイゼン・インターナショナルの100%子会社であり、ロシアでは1996年に活動を始めた。現在の当行に対する最も高い格付けは、フィッチの「BBB-」「Ba2」となっている。銀行の規模については、資産規模はロシアのなかで14番目だが、銀行の効率性という点からいうとロシアではほぼトップにある。当行は充分な資本を有しており、ROEは25.8%で第2位、ROAは3.5%という実績がありナンバーワンである。

 当行は、日本の地方銀行との間でロシアのマーケットでの協力をしていきたいと考えている。例えば、ルーブル建ての口座やルーブルを保有するクライアントへのサービス、ルーブルからのコンバージョンなどである。モスクワの取引所への直接のアクセスや、あるいは貿易取引に関するファイナンスなども考えられるだろう。


SDM銀行: マクシム・ソンツェフCEO

 SDM銀行は1991年に設立された銀行で、中小企業とその従業員を顧客対象としている点が大きな特徴と言えよう。当行は民間の銀行であり、株主についてはその67%は設立者のランズマン個人が保有している。また、2011年には株式の15%を欧州復興開発銀行(EBRD)に売却した。EBRDが株主となったことで、当行は企業として世界基準のプロセスを取ることとなり、例えばフィッチの格付けは「BB-」で、これはロシアにおける当行のような資産規模の銀行としては稀有な例となっている。ロシア国内の格付けでは「BBB+」である。

 当行は保守的であることを重視し、同時にオーガニックに動くことを方針としており、ここ数年は様々な指標において毎年12~15%の伸びを示している。不良債権についても、ロシアの中小企業を対象とした銀行の貸し付け全体では7.5%が不良債権となっているが、当行はそれを1.2%のレベルに抑えている。

 なお、当行は設立以来の伝統として、ロシアの現代絵画をコレクションしており、本店の壁は芸術作品で覆われている。ぜひ日本の皆さまに当行本店にお越しいただき、ご覧いただきたい。


FORA銀行: ラミリ・サッタロフ取締役・CFO

 FORA銀行は、今年で設立25年を迎えた民間の銀行であり、株式の70%は建設銀行という大きなグループが保有している。設立者はアルメニア人で、そのためロシアだけではなくアルメニアでも様々な事業を手掛けている。

 当行は1993年より住宅ローンの分野に進出し、したがって住宅ローンの証券化においては長年にわたる実績を持っている。また、モスクワ市内で行われている不動産売買の取引の実に30%が、当行を通して行われている。

 資料の数値をご覧いただくと、今年に関しては資産が少なくなっていることが分かるが、これは貸付に関してリスクがあったためである。しかしこれは裏返せば、当行のグループ全体に言えることだが、クレジットを非常にしやすいということでもある。ちょうど昨日、10億ドルという大きな取引が行われたが、これはアルメニアの電力プロジェクトへの参加である。このように、当行の活動はロシアにとどまらず海外での実績を有していることが強みと言えよう。アルメニアでは電力だけではなく、既に通信などのプロジェクトでも実績を上げている。


ユニストリーム: ガギク・ザカリャン会長

 私が訪日するのは1989年以来2回目となるが、最初の訪問時に日本のビジネス文化に触れ、多くのことを学ばせていただいた。

 さて、私はロシアのユニストリームとアルメニアのユニバンクの会長を務めているが、これらは共にJNGというグループに所属している。JNGグループは3つの送金システムをそれぞれイギリス、ギリシャ、キプロスに保有している。かつてはユニ・アストロム・バンクという銀行も保有していたが、2008年にキプロスの銀行に売却した。これは当時としては最大規模の取引であった。

 ユニストリームは2001年に設立され、現在、送金システムのマーケットではロシアおよびCIS諸国の中で、28%という最大規模のシェアを誇る。国際的な送金システムについては、ウエスタンユニオンとマネーグラムが有名だが、ロシアではこれらのシェアは小さい。

 ユニストリームの実績については、年間の売り上げは40億ドルで、世界200か国以上に代表部を置いている。30万か所のサービスポイントを持ち、そこで毎月およそ100万人のクライアントが当行のシステムを利用している。

 では、日本の銀行の各位に当行にどのような関心を持っていただけるかという点については、現在日本から中国や韓国、フィリピンなどアジア諸国へ送られる送金の件数も規模も相当大きなものとなっているが、その送金回廊の代替になれるのではないかと考えている。もちろん、申し上げた送金については、個人間の送金の金額は決して大きなものではないが、オンラインでの送金も可能であり、モバイル・バンキングにとっては非常に便利なものとなっている。

 ユニバンクという銀行についても説明させていただくと、この銀行はアルメニアというユーラシア経済同盟のメンバー国にある銀行である。ユニバンクはユニバーサルな銀行であり、特に強みを発揮しているのがリテール業務、そして対中小企業の分野である。アルメニアは非常に古い歴史を持つが、国の規模としては小さい。人口はわずか350万人だが、そのうち35万人以上がユニバンクの顧客である。リテール業務におけるわれわれのシェアは20%以上を占める。

 当行は、中小企業を支援する国際機関である国際金融公社(IFC)やドイツのKFWU、欧州投資銀行、黒海開発復興銀行と協力するなかで様々な活動を行っている。これらの機関はすべて、中小企業のサポート、そして女性による企業活動をサポートするために、当行にクレジットラインを開設している。

 先ほどグリゴリヤン氏が言及したように、ロシアの金利は日本よりずっと高く、アルメニアも同様に高いことを踏まえ、例えば、中小企業を支援するプロジェクトに当行を通じて参加していただくことなどが考えられるのではないだろうか。

 最後に、日本の皆さまと協力し得るもうひとつの分野について申し上げたい。これはライファイゼン銀行と競合するかもしれないが、当行はCISすべての国の200行以上にのぼる大手銀行との間に、コルレス関係を有しているという点を強調しておきたい。


非営利組織「フリー・エコノミック・ソサイエティ」: オリガ・ドロキナ投資プログラム開発部長

 「フリー・エコノミック・ソサイエティ」は非営利の組織であり、世界的に見ても非常に古い歴史を持った組織である。設立は150年前にさかのぼり、現在はロシア科学アカデミー会員であるグラジエフ氏がかかわる組織となっている。

 当組織は、ロシアの他の国々との経済的な統合というテーマに取り組んでいる。さまざまな研究や調査を行っているが、その結果出された結論というのは、日本とロシアのファイナンス分野での協力は、地政学的には確かに難しい問題もあるが、それは可能であり、むしろ必要であるというものであった。日本とロシアが今後ファイナンス分野で協力関係を進めることができれば、それは両国の国益にかなうものとなり、同時に両国の独立性をより確保することが可能になると考えている。

 今回の会合で始まる皆さまとの今後の連携が、お互いにとって生産性が高く、相互利益にかなうものになることを願いたい。


MARSHAL銀行: デニス・ガエフスキー ・キャピタルマーケットチーフ

 MARSHAL銀行は今年設立されたばかりの投資銀行だが、銀行の設立チームのメンバーというのは、それぞれがこれまで国際的な投資分野で数々の実績を上げた人物で構成されており、その過去15年間の実績をまとめると、300億ドル相当になる。私個人については、モスクワ銀行で長期投資を担当する部長職を務めたほか、VTB銀行でも長期投資を専門として長年にわたり実績を積んできた。

 当行のこの設立チームは、これまで電力・通信・航空機産業といった分野における再編成に大きくかかわってきた。東南アジア諸国へのファイナンスの誘致も手掛けており、シンガポールや香港での実績を有している。現在は中国との間で複数のプロジェクトを手掛けている。これは主に中国の国営企業が管理するプロジェクトへの共同参画という形を取っている。今後、債権の分野において日本との間でも協力ができるのではないかと思う。

 最後に、われわれはコンサルタント業務も手掛けており、そのクライアントはロシア国内にとどまらず、アフリカの国々において民営化に関するコンサルティングを行っている。またバルカン諸国とも多くプロジェクトが立ち上げられており、来年、大きな収益の見込めるプロジェクトを公表できる予定である。




 以上が、ロシア銀行協会代表団の金融庁訪問、および全国地方銀行協会訪問に関する概要である。 一行はこの他に、キヤノングローバル戦略研究所の福井俊彦理事長を表敬し意見交換を行ったほか、西日本シティ銀行の久保田勇夫会長とも会談、いずれも短い時間ではあったが率直で有意義な意見交換が行われた。