メディア掲載 国際交流 2017.12.01
中国の金融制度改革は市場メカニズムを浸透させる方向で進んでいるが、近年は債務問題への対応もあって、市場化に向けた動きは緩やかになっているようにみえる。金融市場の安定は極めて重要であるが、金融技術の進歩や経済のグローバル化の進展に金融制度改革が遅れをとらないためには、現状を打破する思い切った対応も必要なのではないか。
中国の金融制度改革は、他分野の改革同様、時間をかけて段階的に進められてきたが、2001年末の同国のWTO加盟は、銀行業金融機関に画期的な変化をもたらした。中国は、WTO加盟後5年以内に銀行市場を完全に対外開放すると約束していた。しかし、当時の国内銀行は外国銀行との競争に耐え得る体力をもっていなかったため、数年内に銀行を立て直さなければならないとの危機感が関係者の間でしっかりと共有されるようになった。
当時の状況を振り返ってみると、国内貸出の約7割を提供していた4大国有銀行は、90年代半ばに全国に広がった投資過熱の後遺症としての貸出の焦げ付きや、国有企業の業況悪化に起因する返済遅延などのために、多額の不良債権を抱えていた。株式制商業銀行など他業態の銀行も、多くは財務体質が脆弱な状況にあった。とくに4大国有銀行については、1998年から00年にかけて財政部から資本注入を受けるとともに、政府支援の下で貸出残高の2割以上に相当した不良債権を簿価で専門買取り機関(資産管理公司、以下AMC)に移管したにもかかわらず、その後わずか数年で、再び自己資本比率の低下と不良債権比率の大幅上昇が鮮明となったショックは大きかった。
また、全国に4万社以上あった農村信用社も、90年代に預金を都市部での投機的運用に回した営業店が多く、その結果、不良債権が積み上がり、財務の建て直しが喫緊の課題となっていた。農村信用社は組合金融機関でありながら、出資者と議決権の関係が曖昧で、経営責任の意識が希薄化しており、その改善も重要な課題と考えられていた。