コラム  国際交流  2017.11.24

中国経済は緩やかな低下傾向から横ばい圏内の安定状態へ ~深圳をモデルとする「創新駆動発展戦略」に基づく雄安新区の建設~<北京・広州・上海出張報告(2017年10月22日~11月5日)>

◇ 本年3Qの実質GDP成長率は前年比+6.8%と、上半期(同+6.9%)に比べて伸び率が若干低下したが、引き続き各コンポーネントとも安定保持が確認された。

◇ 雇用、物価が長期にわたって安定し、6年連続で低下し続けた成長率が下げ止まり、年間目標成長率の達成も心配ない現状は、過去数年見られなかった安定状態である。

◇ こうした経済の現状について、中国人民銀行は本年夏場以降、「穏中向好」(安定を保持しつつ良好な方向に向かっている)という表現を頻繁に用いている。

◇ 内需の堅調な推移を背景に、日本企業の中国ビジネスが明るさを増し、対中投資姿勢が徐々に積極化しつつある。本年入り後、その傾向が一層明確になってきている。

◇ 極端な中国経済悲観論を強調していた日本のメディアのトーンが変化したことを受け、中国ビジネスに対して過度に慎重だった日本の本社サイドも、中国のプラスの部分に目を向ける傾向が広がりつつある。そうした変化を背景に、日本企業の対中投資減少傾向が転換点を迎え、今後増加に転じる可能性を指摘する声が増えている。

◇ 中間所得層の急増を背景に消費者ニーズの高度化が進む中、欧米企業に比べて日本企業の相対的優位性が高まっており、中国人が必要とするもの、欲しいと思うものを持っているのはむしろ日本企業の方であるように見えると指摘されている。

◇ 日本企業は徐々に中国市場に対する積極性が強まる一方、欧米企業の中国市場に対する見方は以前に比べて慎重化、消極化の方向へと向かっている。日本企業はマーケティング力が弱い企業が多く、以前は市場ニーズを把握できていなかった。しかし、最近になって得意分野である中間所得層の需要拡大という構造変化のおかげで中国市場に対する積極性が徐々に強まり、本年入り後、それが一層顕著となり、欧米企業と逆方向に向かう傾向を示している。

◇ 日本企業が中国国内市場での優位性を保つためには、マーケティング力、応用技術の研究開発力、社長および経営陣の経営能力の向上が必要である。

◇ 雄安新区は深圳をモデルとするイノベーション主導型の都市建設を目指し、北京・天津・河北省の経済発展をリードすることが期待されている。同区におけるインフラ建設、環境重視型住宅建設、研究機関の設立などに関連して、日本企業にとって大きなビジネスチャンスが生まれることが予想される。


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中国経済は緩やかな低下傾向から横ばい圏内の安定状態へ ~深圳をモデルとする「創新駆動発展戦略」に基づく雄安新区の建設~<北京・広州・上海出張報告(2017年10月22日~11月5日)>