コラム エネルギー・環境 2017.11.07
10月18日から24日、中国共産党第19回全国代表大会が開催され、直後の25日、第19期中央委員会第1次全会で次の5年間の新しい指導部が選出された。本稿では、党大会を踏まえて、新体制下のエネルギー・環境政策やイノベーション政策の行方を探ってみたい。
今回の党大会の大きなポイントの一つは、習近平総書記が新たな党の指導方針として、「新時代中国特色社会主義思想」を打ち出し、これが党規約に盛り込まれたことである。党の指導で政権運営される中国にとって、この指導方針は今後の国家戦略となる。「思想」の内容と基本方略を見ると、基本的に習近平総書記が就任してからの最近5年間に制定・実施された基本戦略と政策の集大成であり、それらを体系化・理論化したものである。例えば、「思想」の最大な特徴は、1980年代から始まった改革開放時代の目標である「豊かになる」ことはほぼ実現し、次は「強くなる」ことを目的とする「新時代」が始まるとしている点である。この「新時代」は、2014年北京で開催されたAPECにおいて習近平総書記が示した「新常態(ニューノーマル)」に対応するものである。また、今回も強調された「新時代の新しい成長理念」は、第18期中央委員会第5次全会(2015年11月)で打ち出されたものである。このように内容そのものは必ずしも新しくないが、「思想」としてまとめられ、党規約に盛り込まれたことで、一時的ではなく、長期戦略として制度化されたということができる。
この「新時代中国特色社会主義思想」が打ち出された習近平総書記の演説には、過去5年間の成果として、宇宙、深海、航空等のイノベーションと並んでエネルギー消費原単位の大幅削減が挙げられている。特に気候変動に関しては、国際協力をリードし、グローバル環境ガバナンスの構築に貢献し重要なリーダーになったことが強調された。また、「思想」の基本方針にイノベーション、協調、グリーン、開放、共有がキーワードとなる上記の新しい成長理念や生態文明の建設による自然共生社会の構築が盛り込まれた。さらに、生態文明建設の具体策として、イノベーションの促進によりグリーン成長の推進、温室効果ガス削減の国際公約を着実に実現することを含む環境問題への対応、生態系保護の強化、管理体制の改革等が示されている。
また、党大会期間中、計6回の分野別記者会見が開催されたが、党務、文化、外交、経済、民生と並んで、環境は主要分野の一つとされた。「グリーン成長理念を実践し、美しい中国を建設する」と題した記者会見において、環境大臣と中央財経指導小組(習近平総書記が組長、財政・経済政策の立案と実施における中心的な役割)弁公室副主任と並んで、環境保護の施策と実績、さらに重点的にグリーン金融を含む制度と体制の現状とこれからの改革措置が紹介された。
これらの動きにより、あらゆる問題解決の基礎となる経済成長を重視する姿勢には変わりはないものの、改革開放時代における海外技術の導入・消化・普及による経済最優先のから、イノベーションを重視し環境問題の解決を図り低炭素社会の実現を目指しつつ経済成長を推進する政策が今後さらに強化すると予想される。