メディア掲載 グローバルエコノミー 2017.07.19
先々月、しばらくぶりにスタンフォード大学で日本経済に関する講義を担当した。学生の真摯な講義への取り組みには、あらためて感銘を受けた。また、キャンパスには続々と新しい建物が建設され、経済学部には多くの世界トップレベルの研究者が新たに参加していた。
このような状況を見て、日本の大学との間の格差がさらに広がったという印象を強くした。その大きな要因の一つは財政基盤の差違である。スタンフォード大学をはじめとしてアメリカの有力大学は巨額の基金を有しており、しかもそれを高い利回りで運用している。今回、スタンフォード大学の同僚から、同大学の基金運用利回りは年率10~20%であると聞いた。一方、例えば東京大学基金の2015年度の運用利回りは0.86~0.88%である。
この利回りの差は、寄付者の誘因にも影響を与える。アメリカ並みの利回りで運用される場合、まとまった金額を寄付すれば、運用益で半永続的に寄付者の名前を冠したチェア(寄付講座)を維持することができるが、日本の利回りでは基金を取り崩して行くしかない。
日米大学間の基金運用利回りの差に関して日本の低金利を理由とする議論があるだろう。確かに日銀はマイナス金利を設定しているがその幅は0.1%であり、アメリカの政策金利も1%にすぎない。しかも、金融市場はグローバルにつながっている。
したがって利回りの差は運用方法の差に起因する。そして国立大学の場合、その基本的な理由は独立行政法人に準じて課されている資金運用規制である。これによって国立大学の資金運用は国債、地方債、金銭信託等の少数の対象に限定されている。国立大学の資金運用規制の改革と運用方法の変更は、標榜されている大学の「グローバル化」の基本的かつ重要な要素である。