コラム  国際交流  2017.06.23

米国トランプ政権の混迷の深まりと対日・対中外交<米国出張報告(2017年5月29日~6月6日)>

◇ トランプ大統領あるいはトランプ政権に対して、米国の有識者・学者は3月時点で不確実、予測不能、経験不足と厳しく評価していたが、最近さらに「no staff」というマイナス評価が加わるなど、政権運営の混迷は一段と悪化している。

◇ 移民制限、大幅減税、インフラ投資拡大、オバマケア代替法案等トランプ政権が掲げる内政面の重要政策が停滞しており、これが米国経済を悪化させると、18年秋の中間選挙で共和党は厳しい戦いを迫られる。

◇ 6月1日のパリ協定離脱は、米国内の発電所の温暖化ガス排出量や燃料効率に関する規制撤廃を確実にするにはパリ協定からの離脱が必要であるという離脱派の主張に基づくものだった。

◇ 政権発足後4か月以上が経過しても殆どの重要ポストが空席のままの状態が続いている。その理由として、政権内に外部の専門家人材を探す能力が不足していること、政権内部の対立により候補者が拒絶されること、外交分野の多くの専門家は、大統領選挙期間中にトランプ大統領を批判する公開書簡に署名したが、そこに署名した人物は任用の対象外とされていることなどが指摘されている。

◇ 内政面での最大のリスクはロシアゲート事件である。もしモラー特別検察官を中心とする捜査によってトランプ政権内部に関係する重大な問題が指摘されれば、トランプ政権にとって深刻な打撃となるが、今のところその可能性は低いとの見方が多い。

◇ 米中首脳会談において習近平主席が米国によるシリア攻撃に理解を示したこと、および国連安保理で米英仏共同提案に対して拒否権を発動せず棄権したこと。以上の2つの行動は、米国から評価され、足許の米中関係は平穏な状態を保っている。

◇ 米国としては、中国に対して、北朝鮮の非核化と米中貿易不均衡改善の2つを求めていく方針である。優先課題は北朝鮮問題であり、秋の党大会終了後も中国が北朝鮮に対して厳しい対応を取らない場合、トランプ政権が貿易不均衡是正策を巡って中国に対して強硬姿勢に転じ、貿易摩擦が激化するリスクが指摘されている。加えて、北朝鮮で拘束され昏睡状態で帰国した米国人大学生が死亡した事件を背景に、米国民の感情が悪化しており、これが新たなリスク要因となっている。

◇ トランプ大統領がTPPからの離脱を表明した後、日本政府が米国抜きのTPP11の成立を目指していることについて、米国のアジア・太平洋地域の外交専門家の多くはその姿勢を高く評価している。数名の専門家は日本政府は困難に直面しても成立まで決してあきらめないことが最も重要であると日本への期待を述べた。


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米国トランプ政権の混迷の深まりと対日・対中外交<米国出張報告(2017年5月29日~6月6日)>