メディア掲載 グローバルエコノミー 2017.04.28
アメリカのトランプ大統領は、就任後も選挙期間中の主張を大きく変更せず、強硬な手段を用いた「アメリカ・ファースト」政策を実行ないし表明している。象徴的な政策の一つがメキシコとの間の「巨大な壁」の建設である。選挙運動の中でトランプ氏は、この壁の建設費用はメキシコに払わせると述べていた。しかし、メキシコのニエト大統領が直ちに明確に拒否したように、メキシコ政府が建設費を支払うことは現実的ではない。
そこでトランプ大統領は1月末、壁の建設費用に充てるため、メキシコからの輸入品に20%の関税を賦課する考えを表明した。しかし、メキシコからの輸入品に対する関税の少なくとも一部は実際にはアメリカ人が負担することになる。
輸入品にかけられた関税を最終的に誰が負担するかは、経済学で税の帰着の問題として分析されてきた。それによると、関税の最終的な帰着ないし負担は、関税賦課による価格の変化に依存する。メキシコからの輸入品に対するアメリカの需要が価格に対して完全に弾力的、すなわち少しでも価格が上がると需要量がゼロになる場合、あるいはメキシコの供給が価格に対して完全に非弾力的、すなわち価格が変化しても供給量がまったく変わらない場合、これら二つの極端なケースを除けば、関税の賦課はアメリカでの輸入品価格を上昇させる。そして価格の上昇分がアメリカ国民の負担となる。
壁の建設費用に関するトランプ大統領の表現は、誤解を招くものであると同時に、政策立案における経済分析の重要性を示している。