論文  財政・社会保障制度  2017.03.23

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<奈良県上牧町:相次ぐ公共事業が財政を圧迫>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2017年3月号に掲載

はじめに

 第19回は奈良県上牧町を取り上げる。上牧町は奈良県の北西部にあり、北は王寺町、東は河合町、南は広陵町、西は香芝市に接し、町内に鉄道の駅はないものの、複数路線をもつ王寺駅にはバスで15分程度と近く、大阪や奈良のベッドタウンとなっている。「日本書記」には、すでに「かんまき」と地名が出てくる。当時の宮廷の馬が放牧されていたゆるやかな丘陵地帯で、上の牧場、下の牧場があったところから上牧という名前が生まれたといわれている。上牧は当時の宮廷人たちのリゾート地であった。

 戦国時代には、織田信長に叛旗をひるがえした松永久秀の片岡城を攻めるために、明智光秀や筒井順慶らが戦国絵巻を繰り広げたこともあったが、現在では、丘陵地帯を生かした田園風景が広がりバスと電車を乗り継いで大阪の中心部まで1時間以内でいける立地条件から、昭和40年代後半から始まった西大和ニュータウン開発などの住宅開発が進み、一時は人口増加率が日本一を記録したことのあるベッドタウンとして発展した「住宅の町」である。

 このように関西圏のベッドタウンとなり急激な発展に対応するため、土地開発公社は先行して土地を取得し、その結果、土地保有で赤字が続いた。そして、小中学校などの教育施設、文化センター、保健福祉センター、公営住宅整備などの公共事業が続いたために、上牧町は平成20年度決算で実質公債費比率が26.4%と、早期健全化基準の25%を超え平成21年度から平成22年度の2年間、財政健全化団体となった。

 本稿では、上牧町の財政悪化要因と財政再建の取り組みについて概観する。

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奈良県上牧町:相次ぐ公共事業が財政を圧迫