90年代を境に、日本経済のけん引役が大都市圏から大都市圏以外の地域に移りつつある。 地域経済の成長が日本の成長に不可欠となる中、近年、地域産業政策も見直されてきてはいる。しかしながら、地域経済が目を見張るような力強い成長軌道に乗っているとは言い難 い。かつての補助金による企業誘致は、生産性の低い企業を集積させ、逆選択とよばれる問題を招いた。また、90年代末以降にはプロジェクト単位の支援にシフトしたものの、飛躍的な成長には至っていない。
そこで、本稿では、少数でも生産性の高い企業による「コンパクト」な集積を目指し、それをネットワークで支えることで柔軟性を付加する政策を実施することを提案する。各地域が比較優位を持つ産業を特定し、独自性を生かした生産性の高い企業による集積を、プロジェ クトベースでの支援を行うことで形成していく。その際、既存の交通網を活用することで多様なface-to-faceのコミュニケーションを構築するとともに、地域金融機関などが率先してネットワークを築いていく。これからの地域産業政策は企業の「数」ではなく、「質」であることを認識すべきだ。