いま、トランプ旋風が吹き荒れている。選挙戦での公約でおおかた予想されていたとはいえ、本年1月の米国大統領就任直後、まさかの大統領令乱発である。「中東やアフリカの特定の国からの入国禁止」、「シリア難民の受け入れ禁止」、「メキシコとの国境の壁の建設」、「TPPへの参加の取りやめ」、「オバマケアの見直し」など正気の沙汰とも思えない。米国世論の分断は深刻さを増し、国際的にも大きな波紋を起こしているのは周知のとおりである。
そのようなトランプ新大統領の言動に対して、皆保険のない米国でその樹立を悲願としてきたオバマ前大統領はもとより、ドイツのメルケル首相やフランスのオランド大統領など、これまでの伝統的な欧州のリーダー達もそろって非難の声明を出し、警戒の色をかくさない。英国のEU離脱決定に加え、これまでの国際政治の常識を逸脱した米国の新大統領の登場は、まさに「これまでの世界」の終わりを感じさせる。
トランプという言葉は、日本語ではカードゲームを意味するが、英語のtrumpには「切り札」の意味がある。まさに「切り札」大統領なのである。しかし、米国第一主義を唱えるトランプ大統領の登場は、果たして国際政治のパワーゲームの切り札になるのであろうか。