論文  財政・社会保障制度  2017.01.06

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<群馬県嬬恋村:キャベツとともに歩く>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2016年12月号に掲載

はじめに

 第16回は群馬県嬬恋村を取り上げる。嬬恋村は群馬県の西北部に位置する人口9831人(平成28年10月末)の村である。浅間山の北麓に広がる広大な高原で、夏の冷涼な気候を活かした高原キャベツの産地として知られている。昼夜の寒暖差を活かした嬬恋キャベツは甘く、夏秋キャベツの出荷量全国1位である。嬬恋村は、草津温泉と軽井沢という二大観光地に上下を挟まれ、知名度は若干下がるかもしれないが、万座温泉や鹿沢温泉といった名湯から隠れた秘湯まで、さまざまな温泉がある。スキー場もたくさんあり、万座スキー場は映画「私をスキーに連れてって」のロケ地として全国に名を馳せた。このように自然豊かな地域であるため、嬬恋村が長野原町ともに取り組んできた「浅間山北麓ジオパーク構想」が、2016年9月9日に認定を受け、今後の発展が期待される。

 キャベツ農家は、レクサスや高級外車の保有率が高いと言われているほど嬬恋村の暮らしは豊かになったが、嬬恋村は平成20年度決算において「実質公債費比率」が26.7%と、早期健全化基準である25%を超えたため、平成21年度に財政健全化団体となった。その主な要因は国営農地開発事業負担金と村営スキー場の赤字である。国営農地開発事業は現在のようなキャベツの産地にするべく、平成元年度から平成13年度にかけて行われた開発事業で、総事業費が当初計画の145億円から、最終的には304億円に膨らんだことで、嬬恋村の負担も大きくなったことによる。一方の村営スキー場の赤字は、夏場はキャベツの生産で多忙であるが、冬場の雇用を創出したいという目的から開設された村営のバラギ高原嬬恋スキー場の経営不振により借金が膨らんだことが原因である。

 財政健全化団体となった嬬恋村は、財政健全化計画を策定するとともに、平成18年度から取り組んでいた独自の財政健全化計画の第三次に改定した。この結果、平成21年度決算において、実質公債費比率が24.7%に改善されたため、平成22年9月に「財政健全化計画完了報告書」を提出し、1年で財政健全化団体から脱却した。

 本稿では、嬬恋村の財政悪化要因と財政再建の取り組みについて概観する。

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群馬県嬬恋村:キャベツとともに歩く