メディア掲載 グローバルエコノミー 2016.12.06
高い関税で保護されてきた米の消費減少は、なぜ起こったのか。それは、所得向上にともなう食の嗜好の変化でほんとうに説明できるのだろうか。百年以上日本の農政を支配してきた「鎖」とは。長年にわたる農政の3つの柱を見直し、米農業再生の道を探る。
日本農業の最大の問題は、農家の7割ほどが米農家なのに、それが農業生産額の2割程度しか生産していないことである。米に零細で非効率な農家が滞留した。この半世紀の間に、米の消費=生産は4割も減少した。農産物の品目別の消費では、米の一人負けの状態である。他の国では消費が落ちている小麦は、日本では消費を伸ばしている。米消費の減少を農林水産省や農業経済学者の人たちは洋風化のせいだという。しかし、ラーメンやうどんの消費が伸びているのが洋風化なのだろうか。近年の農業生産額の大きな減少を一手に引き受けているのも米である。
このように米農業が惨めな状態になったのは、どうしてなのだろうか?日本の農業は高い関税で競争力のあるアメリカやオーストラリアの農業から保護されてきた。にもかかわらず日本農業、特に米農業が衰退するということは、その原因がこれらの国のではなく日本にあることを示している。
米農業は高い価格で、しかも農業の中で最も手厚く保護されてきた。しかし、最も衰退した。価格で支持するのではなくEUのように直接支払いで保護すれば、高い関税は必要ない。また、価格が低下すれば、消費にも良い結果を生じる。しかし、この簡単なことが日本ではできない。私はかつてジャーナリストから、「欧米では農業保護のやり方を価格支持から直接支払いに転換したのに、なぜ日本でできないのですか?」という質問を受けたことがあった。一晩考えて答えが出た。欧米にはなくて日本にあるものがあるからだ。
これは、姿形を変えてはいるが、百年以上も日本の農政を支配し、農業に打撃を与え続けてきた。特に米農業はこの鎖に縛られてきた。米農業を再生する道は簡単である。この鎖から米を解き放てばよいのだ。