コラム 国際交流 2016.11.25
◇ 本年第3四半期の実質GDP成長率は前年比+6.7%と、前期(同+6.7%)並みだった。固定資産投資は伸び率の鈍化が続いているが、輸出は数量ベースで見ると下げ止まりの兆しが見られている。消費は引き続き堅調を維持し成長率を支えている。
◇ 先行きについては、輸出はマイナス要因とならないと見られているが、固定資産投資は緩やかな伸び率鈍化傾向が続く。消費は小型省エネ車向けの優遇政策が年内で終了することから、来年は反動減の影響が生じると予想されている。住宅関連消費も今後徐々にスローダウンしていくと見られている。以上のような各コンポーネントの見通しを前提に、来年は足許の減速傾向が続き、通年で6.5%前後と6.5%に達しない可能性も十分考えられるとの見方が一般的。
◇ 本年第1四半期に、北京、上海、深圳等の1級都市で不動産価格が急騰した後、蘇州、南京、合肥等の一部の2級都市でも急上昇した。これらの都市では外部からの流入人口が多く、不動産需要が増大しているため、不動産の在庫水準が低下して適正在庫水準を下回っていた。そこに金融緩和を背景とする流動性が流入したため、価格が急騰したと見られている。3月下旬および9~10月にかけて主要都市において、2度にわたり購入規制を強化した。これにより、10月以降住宅販売の増勢が鈍化した。
◇ 国有企業改革の新たな方法として、党の指導の下で国有企業同士を合併させ、リストラを進めるという手法を導入し、さらに改革を推し進めようとしている。9月に発表された宝鋼集団と武漢鋼鉄集団の合併がその最初のモデルとして注目されている。
◇ このところ日本企業の対中投資姿勢にも以前に比べて若干ながら積極性が増しているように感じられる動きが見られ始めている。中国現地に駐在して多くの日本企業と接している日本の3メガバンクや政府関係機関の幹部が「日本企業の中国ビジネスの風向きが少し変わってきているように感じられる」と指摘した。
◇ 来年も日中関係が引き続き改善傾向を辿るようであれば、能力増強設備の拡大を決断せざるを得なくなるとの見方が増えてきている。
◇ 今年の日系大手3社(日産・トヨタ・ホンダ)合計の中国での販売台数は、足許の伸び率がこのまま続くと、389万台に達する見通しである。昨年の日本国内における3社の合計販売台数は277万台であることから、主要な日本車メーカーにとって中国市場はすでに日本市場を大きく上回る規模となっている。
日本企業の対中投資の風向きに変化の兆し~中国経済は引き続き安定を保持しながら緩やかな減速傾向~<北京・上海・広州出張報告(2016年10月20日~11月4日)>