メディア掲載  財政・社会保障制度  2016.10.31

企業版ふるさと納税のポイントと課題

一般財団法人企業経営研究所 季刊誌 [企業経営] 2016年秋号(No.136) 掲載

はじめに


 「企業版ふるさと納税」とは、地方再生法のもと、国(内閣府)が認定した自治体の地方創生のプロジェクトに対して、企業が寄附を行った場合に、新設した税額控除が受けられるという制度である。平成28年度から平成31年度までの4年間の時限措置である。

 「企業版ふるさと納税」の正式名称は、「地方創生応援税制」である。志のある企業が地方創生を応援する税制という意味で名づけられた。企業が寄附しやすいように、税負担の軽減効果を2倍にし、寄附額の下限は10万円とし、少額寄附を可能とした制度である。

 国は、地方交付税交付金や国庫負担金などの財政を通じて、自治体へ財源を移転している。消費税増税の延期にみられるように、国税のパイを増やすことは容易でない。国民や企業に対して、自治体の財源を新たな形で負担してほしい。民間資金を地方創生に活用してほしい。都市部に偏る企業の税収を地方に移したいという願いがある。こうした背景から、近年では、「個人版ふるさと納税」が創設され、国民が自由に自治体へ寄附ができるようになり、ここ数年の寄附額の伸びが著しい。そして、今回の「企業版ふるさと納税」によって、企業の自治体への積極的な寄附が期待される。

 自治体は、これまで以上に、企業から寄附という形で資金調達することが可能となった。ただし、この「企業版ふるさと納税」には、いろいろな前提条件や留意事項があるため、わかりにくい点が多い。「個人版ふるさと納税」の企業版と捉えて、取り組むと全く違うことに驚くことになる。

 そこで、本稿では、「企業版ふるさと納税」の仕組みや寄附する企業側のメリット・留意点、国・自治体の課題などについて、自治体への電話インタビュー結果を交えて解説する。・・・



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企業版ふるさと納税のポイントと課題