コラム 財政・社会保障制度 2016.10.20
医療介護制度運営の権限と責任を都道府県に集約する改革が進められている。これは医療介護の財源全体とケア提供体制の中核部分を同一組織が広域単位でガバナンスする仕組みを創ることを意味しており、改革の方向として支持できる。先進諸国の多くはその基本的枠組みを既に構築、具体的ノウハウを科学するPopulation Healthを発達させている。
わが国の医療介護制度は、財源を担う保険者と医療介護提供事業体が共に規模が小さくバラバラに経営されてきたため、広域単位で全体最適を目指す主体を欠き、医療介護提供体制全体を見た場合ニーズと大きなミスマッチを起こしている。このうち財源については、市町村国民健康保険を都道府県単位へ統合することで改善が見込まれる。しかし、政府が医療介護提供体制全体最適化の柱と位置付ける地域医療構想を実現することは、強いリーダーシップを発揮できる大規模非営利事業体が存在しない限り困難と思われる。
2015年医療法改正で創設された地域医療連携推進法人は、活用の仕方しだいでこの大規模非営利事業体にまで進化する可能性を秘めている。しかし、スタート時点では直接病院経営することが許されていない、複数の医療法人の参加に固執するあまり経営者が同じ社会医療法人と社会福祉法人の合併を認めていない、社会福祉法人の地域統合に使えない、過剰投資の最大の原因である自治体立公立病院の改革にどのように活用できるかが不明確、という問題がある。そこで本稿では、総務省が「統一的な基準による地方公会計マニュアル(平成28年5月改訂)」で示した独立行政法人連結会計の概念を使うことで、セーフティネット機能の中核を担う大規模非営利事業体を生み出す方法を提言する。