コラム  国際交流  2016.09.30

第2回東方経済フォーラムに参加して

 筆者は9月2日から4日にかけてウラジオストックで開催された東方フォーラムに参加した。東方経済フォーラムは、昨年ロシア大統領令で設立されたフォーラムで、「大統領令で設立されたフォーラムには必ずロシア大統領が出席する」という原則に従って、昨年に引き続きプーチン大統領が出席したほか、今年は、安倍首相、朴韓国大統領も出席した。大統領令で設立されたフォーラムは、このほかには、毎年6月に開催されるサンクトペテルブルク国際経済フォーラムだけである。なお、筆者は昨年の第1回フォーラムにも参加した。昨年とも比較しながら、今回のフォーラムのポイントを以下紹介したい。


 もっとも際立ったのは、フォーラムの一部として行われた「日露フォーラム」の参加者の飛躍的な増加である。日本側、ロシア側共に、昨年に比較して約6倍と思われる多数の参加があった。主会場以外では最大の会議室が満杯になり、熱気のあふれるセッションとなった。このような参加者の増大には安倍首相の出席が大きな要素となっていたが、ソチにおける「対ロ経済協力8分野」の提案を受けて、日本側の関係省庁及び関係業界が短時間のうちに真剣な検討をしてきたことも大きな理由だったと思われる。


 日本側の参加者が、政府や民間企業だけではなく、北海道、新潟、富山といった地方公共団体や、大学、病院といった分野まで裾野が広がった。


 会議期間中に「8分野」を中心に日露の協力案件の調印が行われ、またガスプロムがサハリン3の相手方として三井物産を選んだとのミルレルガスプロム社長による「サプライズ」の発表など、具体的な成果が見られた。従来のようなエネルギー分野に加え、遠隔医療や、極寒の地ヤクーツクにおける温室栽培による野菜の生産などの具体的な事例が報告されたことも注目に値する。


 会議直前に報道された、世耕経済産業大臣の「対ロ経済協力担当大臣」への任命も、官邸主導による日露間の関係改善につながるものとして好意的に迎えられた。我が国のこのような取り組みに対し、中国、韓国については、参加者は多いものの、具体的な成果があまり見られなかった。思うに、中央党大会を来年に控えて現場が動きにくい中国や、トップの方向性が見極めにくい韓国の企業は、方向性が明確でないというハンディキャップがあったものと思われる。


 安倍首相が自らウラジオストックを訪問し、ソウルよりも近いという地理的利便性を肌で感じたことも大きな意義を有する。この経験が、「毎年このフォーラムで会おう」というプーチン大統領への呼びかけに結実したものと思われる。


 最後に、フォーラム後にプーチン大統領の訪日日程が発表されたことの重要性については説明を要しない。




 このフォーラムの中で特に興味深かったのが、ロシアで極東開発を担当する極東発展省のアレクサンドル・ガルシカ大臣が、フォーラムのセッションで行ったプレゼンテーションである。こちらの内容(全文)をキヤノングローバル戦略研究所・吉岡明子研究員がロシア語から日本語に翻訳したものがある。ご参考までに紹介させていただきたい。


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第2回東方経済フォーラムにおけるアレクサンドル・ガルシカ極東発展大臣のプレゼンテーション(2016年9月)