ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2016.08.31
この論文では、戦前日本の所得分配に関する新しい推計を行った。アンソニー・アトキンソン、トマ・ピケティ等の研究グループは、税務統計とパレート補完により、主要国における上位所得者への所得集中度を長期的に推計し、所得分配および広く経済学に関する研究に大きなインパクトを与えた。日本についても彼らの研究プロジェクトの一環として、森口千晶とエマニュエル・サエツが1890年代~2000年代における上位所得グループへの所得集中度を推計している。これらの研究はいずれも、国単位で推計を行っているが、ここでは戦前日本について府県別に上位0.1%グループへの所得集中度を、同じく税務統計とパレート補完によって推計した。また、推計されたデータをもとに、経済発展と所得集中の関係、所得集中と治安との関係を、府県別クロスセクション・データによって検討した。その結果、1920年代以降、経済発展と所得集中度の間に正の相関が見られるようになったこと、所得集中は治安の悪化と正の相関を持っていたことが明らかになった。
戦前日本における経済発展と所得分配:府県別所得上位集中度の推計と分析 (PDF:306KB)