コラム 国際交流 2016.05.17
◇ 2016年第1四半期の実質GDP成長率は前年比+6.7%と、前期(同+6.8%)比0.1%ポイント下落した。実質成長率は引き続き緩やかな減速傾向が続いている。
◇ 本年の成長率見通しについて、1月下旬時点では政府内部に6.5%に達するのが難しいかもしれないとの慎重な見方が多かった。しかし、1~3月中に不動産投資拡大促進策が次々と打ち出されたほか、インフラ建設投資も拡大したため、今回は6.5%に達しないとの見通しを示す人はなく、6.7%前後との見方が一般的だった。
◇ 輸出(ドルベース)は1Q前年比が-9.7%と、前期(同-5.2%)に比べてマイナス幅が大きく拡大し、依然として減少傾向が続いている。その要因は、第1に、日米欧先進国、アジア諸国等中国の主要輸出先の国々の需要低迷、第2に、中国の労働力コスト上昇を主因とする生産コスト上昇による中国企業の輸出競争力低下、第3に、生産拠点の海外移転に伴う輸出減少、第4に、元高による輸出競争力の低下等である。
◇ 本年1Qの不動産開発投資は前年比+6.2%と前年(通年同+1.0%)に比べて大幅に伸びを高め、成長率引き上げに大きく寄与した。しかし、3月下旬以降、1級都市では不動産投資抑制策が強化されたため、不動産投資の拡大傾向はあまり長続きしないとの見方が一般的であり、3Q以降は徐々にスローダウンしていくと予想されている。
◇ 3~4級都市の多くは、不動産の過剰在庫を抱え、不動産価格の下落が続いているが、中長期的には実需の増加が期待されているため、下落幅は小幅にとどまっている。
◇ 過剰設備の削減を強力に推進する本年の政策方針の下では、さすがに大量の失業者を短期間に吸収することは難しく、労働市場の需給バランスはやや緩和しつつある。これが所得の伸びに影響するため、消費は堅調ながら伸び率は若干鈍化する見通し。
◇ 今年の経済政策運営において最重点政策は過剰設備の削減である。しかし、これに対する地方政府、金融機関、国有企業等抵抗勢力の反発は強い。
◇ 日本企業に足許の景況感を聞いてみると、業種別の好不況のばらつきは大きいが、経済成長率が緩やかに鈍化していることに伴う景気減速を気にしている企業は殆どない。この点は、日本国内のメディア報道の内容とは大きく異なっている。むしろ、最近になって、中国の地方政府や国有・民間企業の日本企業に対する誘致・提携姿勢が積極化しているため、多くの日本企業のトップ層の表情は総じて明るい。
◇ 中国現地駐在の記者によれば、現地駐在の記者の中で、中国の景気がすぐに悪くなると思っている人はいない。ましてやバブル崩壊を予想する記者は一人もいない。
成長率は緩やかな減速ながら、現地日本企業の景況感は明るさが増大 ~年明け後、インフラ建設と不動産投資が景気を下支え~<北京・上海出張報告(2016年4月17日~4月29日)>