その他 国際交流 2016.04.20
キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2015年12月2日に、シンポジウム「地球規模の公共プロジェクトの必要性とBRICS Bank」を開催しました(モデレーター:小手川大助研究主幹)。これは同シンポジウムでの講演者のひとり、シラー研究所創設者 兼 会長ヘルガ・ゼップ=ラルーシュ氏(Helga Zepp LaRouche, The founder and the president of Schiller Institute)の講演録です。
私は本日、ランドブリッジ、陸の橋、そしてシルクロードについて話をしたいと思います。そして、この政策がなぜ緊急に必要なのかということを話します。この地図は今日世界中で起こっているさまざまな危機をプロットしたものです。ここにある危機の数々をご覧いただきますと、第1次および第2次世界大戦前の状況は、これと比べるとたいしたことではないように見えます。
現在の世界の危機
つい先日、トルコがロシアの戦闘機を撃墜しました。これはあらかじめ決まった筋書きに沿っていること、つまりこのようなことが起きるのはホワイトハウスの暗黙の了解がなければ起こりえないとワシントンの情報筋も言っています。その後、オバマ大統領とNATOはトルコを支持する声明を発表しています。これによって示されるのはこの状態がいかに危険なものかということです。
ワシントンの新聞、PLITICOは、人々に対して次のように注意を呼び掛けています。こういったロシア、そしてアメリカの核兵器は、既に警報を受ければすぐに発射できる準備態勢にあるということ、また、今回のような戦闘機が撃墜された事件を受けた時には、軍部は1分間で大統領に対して選択肢を示し、そこではブリーフィングが30秒、そしてそれぞれの危機に対する選択肢が示され、それを受けて大統領は3分から6分の猶予の間で実際に核兵器を発射するかどうかの決断を下さなくてはいけないということです。これを考えてみると、皆さんは眠れない夜を過ごされるのではないでしょうか。
ロシアと中国は、はっきりとこう言っています。東欧におけるアメリカの欧州弾道ミサイル防衛システムは先制攻撃ドクトリンだとみなすと、あるいはプロンプト・グローバル・ストライク(即時地球規模攻撃)および中国に対するエアシーバトルも同様であると言っています。こういったものにより、多くの欧米の軍事専門家が警告しているように、冷戦の期間中より今の事態は危険であります。冷戦のさなかであっても、あるいはキューバ危機の最中であっても、今はない行動規範があった。今はそれがない。アメリカの大統領とロシアの大統領の間の行動規範、そしてホットラインも存在していないのだと警鐘を鳴らしています。
また、こういったさまざまな対立は、アメリカがあくまでも一極支配の世界の維持にこだわるからだと。アジアが台頭を続ける中で、単純にアジアの台頭は多極世界を生み出しているにもかかわらず、デンプシー元米軍統合参謀本部長は、西側諸国が「ツキディデスのわなに陥ってはならない」と言っており、警鐘は聞き入れられていません。加えて、ウクライナの危機や、南シナ海の緊張、あるいはIS、ボコハラムによる悪魔的な野蛮行為、こういったもので危険の構図ができ上がってくるわけです。
同様に、実在する危機としては、太平洋の両側での金融システムの崩壊です。IMFも現在はもはや中央銀行はこういったことに対応する手だてが残っていないと言っています。既に量的緩和、ゼロ金利政策は取ってしまっているからです。こういったことをすべて見てみると、遅きに失する前に人類はこの道筋を変えるえることができるのか。われわれはこの道をそのまま突き進んでしまえば、カオスに陥ります。大き過ぎて潰せない(too-big-to-fail)銀行体系が一瞬で破綻し、金融システムが崩壊する。あるいは人類が抹殺されてしまう核戦争に至るのか。人類としてわれわれは十分な知能、道徳を持ち合わせているのだろうか。そしてこの原因を取り除けるのだろうかということが問われていることになります。・・・
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グローバルなプロジェクトの必要性-ニューシルクロードについて(PDF:2037KB)