その他  国際交流  2016.04.05

Jeffrey Steinberg氏講演録 「米国経済の実情」

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2015年12月2日に、シンポジウム「地球規模の公共プロジェクトの必要性とBRICS Bank」を開催しました(モデレーター:小手川大助研究主幹)。これは同シンポジウムでの講演者のひとりJeffrey Steinberg氏(Editor in chief of the Executive Intelligence Review)の講演録です。



 私はこのプレゼンテーションの中で、まず最初に悪いことばかり申し上げます。しかし、その悪いニュースの中にもいろいろとこれからわれわれが期待できるような、本当はもっと昔に実施してもらいたかったような政策変更が、アメリカで起こるのではないかということもお話ししていくつもりです。


失業率の実態


 アメリカの経済の状況を主要な新聞やCNNやブルームバーグなどのアメリカのマスメディアでご覧になったり、オバマ大統領あるいは財務長官の発表などをお聞きになりますと、アメリカの現在の経済の状況からとても歪曲したような感想を得られると思います。いろいろいわれているよりもアメリカの経済はもっと悪い状況にあります。

 毎月、アメリカの労働省労働統計局から統計が出されております。それは雇用状態の総体的な絵を描き出しているものです。そのデータを全体的にご覧になりますと、新聞のヘッドラインでスナップ的に得られるものとは違った構図が出てくると思います。アメリカの失業率はここ2年間に10%から7、8%へと下がり、最新のレポートでは、10月の失業率は大体5%まで下がっているといわれています。5%というのは技術的にいうと完全雇用ということになります。しかし、その労働統計局のデータをよりしっかりと見ていきますと、まずは最初に、彼らがいう労働力と、実際の18歳から67歳の生産年齢人口の間に、大きな違いが見えてきます。勉学をしているわけでもないし、軍に入っているわけでもない、あるいは刑務所にいるわけでもない人たち、さらに障害で苦しんでいるという人たちなどを除いて、実際に生産年齢人口で働ける人たちを見ますと、労働人口は1億5600万人ぐらいになります。

 しかし、それに加えてさらに9400万人ぐらいの人たちがいるのです。彼らは18歳から67歳までの間で仕事をしていない人たちです。この9400万人の人たちは、すでにもう仕事を見つけることも諦めてしまった、あるいは決して仕事を見つけることができないということで、労働力人口の中にはカウントされていないのです。こうした人たちは統計の中には出てこないのです。このような人たちを含めて生産年齢人口全体を見て、その中でもフルタイムの雇用を探している人たちを見ますと、そういう人たちが職に就けないということで、本当の失業率は10%を超えることになるのです。その他の要素として、実際にアメリカの中で働いている人、あるいは労働力人口の中に入っている人、そういうふうに計算されている人たちの40%が年間所得1万5000ドル以下であるということが挙げられます。そういう人たちはフルタイムで週に35時間から40時間働いているが、最低賃金で働いている。あるいは、フルタイムの仕事が見つからず、パートタイムなどの不完全就業の状態にあります。・・・


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米国経済の実情(PDF:408KB)