論文  財政・社会保障制度  2016.03.11

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<北海道由仁町の財政再建:過疎地域ゆえの財政負担>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2016年3月号に掲載

はじめに

 10回目は北海道由仁町を取り上げる。由仁町とは珍しい町名である。アイヌ語の「ユウンニ(温泉があるところという意味)」がなまったものといわれている。札幌市や新千歳空港、苫小牧港に近接する「都会に近い田舎」を特色として、国内最大級の英国式ガーデン「ゆにガーデン」やコーヒー色のお湯が人気の温泉宿泊施設「ユンニの湯」などの観光施設があり、豊かな自然に恵まれた農業を基幹産業とする人口約6,000人のまちである。

 由仁町は平成20年度決算で、実質公債費比率26.4%と基準値の25%を超え、財政健全化団体になった。また、病院事業会計も平成20年度に資金不足比率が135.1%と経営健全化指標に大きく抵触した。

 由仁町が財政健全化団体になった要因は公共事業である。道路橋梁や公営住宅などの社会資本整備に加え、平成3年度から平成5年度にかけて、ゆめっく館(図書館)や三川プール、由仁町民プールが整備され、平成7年度から由仁駅裏に健康元気づくり館、老人短期入所施設、文化交流館が、さらに、平成11年度から、ゆにガーデンや米穀乾燥調製貯蔵施設、種子馬鈴薯集出荷貯蔵施設、三川保育園が整備された。これらの整備に伴い、地方債が発行され、平成13年度末の地方債残高は約127億円にまで達した。これは、当時の由仁町民の人口1人当たりにすると、約180万円の借金を抱えている状況で、北海道の町村平均の約110万円を大きく上回っていた。

 このほか、上水道・農業集落排水等に係る他会計への繰出金や公衆衛生、葬斎組合等一部事務組合への負担のほか、道営土地改良事業等の債務負担行為も実質公債費比率を上昇させる要因となった。また、平成13年度に償還期間を延長したことも要因といえる。 また、病院事業会計の資金不足比率が経営健全化基準以上になった要因は、平成10年度からの資金不足額の累積による。医業収益が伸び悩むなか、思ったようなコスト削減ができず、一般会計からの繰入金も十分に得られていなかった。

 財政健全化計画を実施した結果、平成20年度には26.4%だった実質公債費比率が、平成21年度には27.4%となり、平成22年度には24.9%となり、基準値の25%を下回ったため、2年前倒しで財政健全化計画完了報告を提出した。病院事業会計についても、経営健全化計画を実施し、平成20年度には135.1%だった資金不足比率が、平成21年度には105.3%、平成22年度には77.0%、平成23年度には53.0%、平成24年度には27.5%と順調に減少し、平成25年度には13.0%となり、基準値の20%を下回ったため、経営健全化計画完了報告を提出した。...


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北海道由仁町の財政再建:過疎地域ゆえの財政負担