ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2016.02.26
「ラッファー曲線」とは、1974年のアーサー・ラッファー氏の発言に由来する経済学用語である。高すぎる税率は経済活動を抑制し、むしろ税収を減らす可能性があるため、横軸に税率、縦軸に税収を取ると、そのグラフは逆U字型をしていると考えられてきた。しかし、近年の研究では、マクロ経済モデルから導出される消費税のラッファー曲線は、労働所得税や資本所得税のラッファー曲線とは異なり、逆U字型ではなく、右上がりの形状をしていることが報告されている。
本稿では、このパズルを解くために、標準的な新古典派マクロ経済モデルを用いて、消費税のラッファー曲線の形状についての解析的な分析を行った。その結果、消費税のラッファー曲線の形状は、消費者の効用関数のタイプに依存していることを発見した。マクロ経済学では、効用が消費と余暇について加法分離型(additively separable)のケースと、非分離型(non-separable)のケースの両方がしばしば用いられる。本稿ではこのうち、加法分離型効用関数の場合、消費税のラッファー曲線は逆U字型になりうるが、ラッファー曲線に関する先行研究で用いられている非分離型効用関数の場合、消費税のラッファー曲線は右上がりになることを示した。
また、効用関数が加法分離型であるか非分離型であるかの違いは、消費税のラッファー曲線の形状だけでなく、逆U字型になる労働所得税や資本所得税のラッファー曲線のピーク税率(税収が最大になる税率)にも大きな影響を与えることを明らかにした。
本稿の結果は、消費税増税は場合によっては必ずしも常に税収増加につながるわけではなく、労働所得税や資本所得税と同様に高すぎる税率は税収確保の観点から見ても避けたほうがよいかもしれないことを示唆しており、現実の課税政策にも一定の含意があると考えられる。
When is the Laffer Curve for Consumption Tax Hump-Shaped?(英語) (PDF:1254KB)