論文  財政・社会保障制度  2016.02.24

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<洞爺湖町の財政再建:火山と共に生きていく>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2016年2月号に掲載

はじめに

 9回目は北海道洞爺湖町を取り上げる。洞爺湖町は平成の大合併の際に、旧虻田町と旧洞爺湖村の合併により生まれた町である。 洞爺湖町は、湖(洞爺湖)と山(有珠山)と海(噴火湾)に囲まれた自然豊かな町であり全国的に有名な温泉郷を有する観光地でもある。平成21年には、「洞爺湖有珠山ジオパーク」が日本で初めて世界ジオパークに登録された。ジオパークとはジオ(地球)を学び楽しむ大地の公園を意味し、洞爺湖有珠山周辺は火山活動による大地の変動がみられる貴重な場所として登録された。そして、平成20年にはG8首脳会議の「北海道洞爺湖サミット」が開催されたことも記憶に新しいことであろう。

 しかし、このように雄大で美しい有珠山は活火山であるため、数十年ごとに噴火を繰り返している。明治43年の噴火では明治新山(四十三山)が、昭和19年の噴火では昭和新山が生まれた。そして、噴火のたびに洞爺湖周辺の住民は避難を余儀なくされる。最近では、平成12年3月の噴火で旧虻田町民は全員避難した。洞爺湖町以外にも、近隣の伊達市や壮瞥町でも多くの住民が避難したが一人の死傷者を出すこともなく避難できたことは国や自治体、関係機関、住民の行動によるものである。素早い避難により、人的被害はなかったものの、住宅損壊や道路破損などの物的被害は多く、西山火口により国道230号は冠水し使用できなくなった。それ以降、国道230号が走っていたその部分は、一度も水が引くことがなく、現在では西山火口沼と呼ばれ、当時の道路標識や乗り捨てられた車などはそのままである。道路が沼になるほど、大きな地殻変化が起きたということである。

 旧虻田町はこの噴火による災害復旧関連で83億7430万円の地方債を発行した。そして、旧洞爺村では平成11年度から平成15年度にかけて、農業研修センター、財田キャンプ場、とうや水の駅などの施設整備のため、約12億円の地方債を発行していた。また、旧虻田町と旧洞爺村は、平成18年3月の合併以前から、毎年の収入不足分を基金の取り崩しにより補填しており、合併後もそれが引き継がれるという財政構造的な問題も抱えていた。そのため、平成19年度決算の経常収支比率は100.1%、平成20年度では102.1%となっていた。

 このように、多額の地方債の発行による公債費の償還額の増加が財政を圧迫し、平成20年度決算の実質公債費比率が早期健全化基準の25%を上回る29.8%となり、財政健全化団体となった。

 本稿では、「火山との共生」を選択し、被害を最小限に留める体制を作りながら、洞爺湖や有珠山の与えてくれる自然や温泉の恵みを享受している洞爺湖町の財政再建について概観する。...


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洞爺湖町の財政再建:火山と共に生きていく